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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
朝比奈家の次男として生を受けた純也は、4歳までは日本で育ち。
それ以降は両親の仕事の都合で、フランス南東部に位置するリヨンへと移住した。
国際弁護士の父と、日本語学校 講師の母。
2歳上の兄・克也、2歳下の妹・成実に挟まれ、新天地でも賑やかに過ごしていたが。
リヨンへ移住した1年後には、5歳下の妹・友実も誕生し、朝比奈家は ますます騒がしくなった。
ちゃっかり者の長男・克也は、小さな妹達が機嫌の良い時は進んで面倒を見るのだが。
それが少しでも ぐずったり、我が儘を言い出そうものならば、
「あ! 僕、みんなとサッカーする約束あったや!」
と、2歳下の純也に妹達を押し付けて遊びに行く兄で。
けれど、人との争い事や和を乱す事を極端に嫌う “中間子” の純也は、大して文句も言わず、
妹達の おままごと や お人形遊びに付き合っていた。
幼かった4兄妹は、フランス語の呑み込みも早く。
それぞれ現地のエコール(小学校)、コレージュ(中学校)、リセ(高校)へ進み。
その後、
純也は18歳で国家資格バカロレアを取得し、大学の職業教育課程DUTを2年で修めた。
3年制の大学や、兄が進んだ5年制のグランゼコールへの進学、という選択肢も勿論あったが。
しかしそうしなかったのには、きちんとした理由があった。
純也は将来の己の職業を、秘書・ホテルマン辺りで ぼんやり考えていたのだ。
元々、忙しい両親と気分屋の兄のせいで、妹達の世話を一手に引き受ける事になったのだが。
その事に対し、本人が「苦痛」「もう解放されたい」と思ったのは、一二度しかない。
人に尽くし本人に感謝されたり、周りに感謝される――
その奉仕の精神が “自分の才能” だと、幼心に気付いていたのだ。
まあ、2歳下と5歳下の妹達が、
「純兄」「純兄」と慕ってくれるのも嬉しかったし。
――――
※DUT:大学短期技術教育免状
※グランゼコール:フランス独自の高等教育機関
大企業の管理職、官公庁のキャリア組等を目指す人間が進む