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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
調理・ワインの選別は当たり前。
シャンパングラス18本を乗せた重いトレイを、笑顔を保ちながら10分直立不動すれば、
胸筋・背筋・上腕二頭筋が悲鳴を上げた。
プロジェクトのプレゼン、筆記テスト、そして実技テスト。
睡眠時間など3時間がざら。
ポロの試合へ出張研修に行けば、吹き付ける風にプラスチック製のシャンパングラスがバタバタ倒れ。
試合が終わる頃には、執事候補生15名は皆 シャンパンでびしょ濡れになっていた。
おっといけない……。
愚痴と苦労話ばかりになってしまった。
まあ、
フランスとイタリアの有名ワイナリーを回っての実地研修(ティスティングあり)は、とても愉しかったですが。
・スタッフの運用・管理
・邸宅内の管理方法
・食事の管理や給仕など
・リネン類などの管理
・衣類の管理、購入に関する知識
・コミュニケーションについて
・礼儀作法としきたり
・調理
・その他(人格形成、旅行の随行についてなど
それら全てを8週間でみっちり仕込まれた15名の候補生は、晴れて卒業試験に合格した。
卒業セレモニー。
皆が天に向かって放り投げた、執事の証し――白手袋。
それらを嬉々として見上げる面々の表情は、地獄の扱きに耐え抜いた事により、
8週間前に浮かべていた不安気な表情とは異なり、自信に満ち溢れていた。
ちなみに、実技も筆記も常にトップだった純也は、首席で卒業。
8週間で13,750ユーロ(約180万円)は正直「ぼったくり?」と、入学前は首を捻ったが。
学長曰く「8週間で15年間の執事修行に匹敵する内容」というのは、真実だと思う。
(以上、The International Butler Academy紹介文より転載)
密度の濃い過ぎる8週間を終え、堂々と執事ギルド(組合)に所属した純也は、
程無くして、実家のあるフランス・リヨンに戻った。
なにせ今の世は情報社会。
一見 時代錯誤で、中世ヨーロッパの遺物と思われがちな “執事” という職業も、
インターネット上で求人を探せる、便利な時代だったりする。