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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
The International Butler Academyに入学した生徒の95%が卒業し。
その内の85%が王室や個人邸宅、大使館、ホテルやリゾート地、豪華客船やスーパーヨット、またトップ企業などに就職しているという実績がある。
リヨンの実家の私室で、執事ギルドの求人サイトを閲覧すれば、
首席で卒業した純也の元には、
『貴方を当家の筆頭執事として迎えたい』
『5つ星ホテルで、コンシェルジュスタッフから始めませんか?』
と指名してくる雇用主が幾つかいた。
執事職の求人が多いのは、中東からのもの――
バーレーン王国、UAEのアブダビやドバイといった、オイルマネーで潤う富裕層だ。
(砂漠……ですか。 “ラクダの手懐け方” を調べておかないと……)
らしくない冗談を脳内で零しつつ「これは、アラビア語を習得すべきか?」と悩み始めた頃。
「純也ちゃ~ん、ランチの用意が整ったわよ~」
階下からの母親の声が、その思考を遮断した。
「はい。今行きます」
階段を降りながらも階下から漂ってくるのは、懐かしい我が家の食卓の香り。
そしてダイニングテーブルに並べられていたのは、和洋折衷もここに極めり。
途轍もない量の料理の数々だった。
「これは……凄いですね……」
ランチとは思えぬ振る舞いに、ダイニングの戸口で固まるっていると、
「そうよぉ♡ ママン、純也ちゃんの大好物、た~~っくさん作ったのよ♡」
語尾に♡付けまくりな母親が、自分より随分と背の高い息子の背を押し、テーブルの定位置へと促す。
「まだまだ たっぷりあるから、おかわりしてね♡」
生まれも育ちも日本の母親を、一言で表現すると「可愛らしい」
背も低いし童顔だし。
服の趣味もフリフリ & 花柄なので、とても40代半ばには見えない若作りである。
息子と腕を組んで街を歩き「カップルですか?」と間違われるのが “無上の悦び”――
という、少々変わった母親は、
「一体、何日分のスープを仕込んだのっ!?」と突っ込みたくなるくらいドでかい寸胴鍋を、おたまで掻き混ぜていた。