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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

 あまりの量に、見ているだけで腹一杯になりそうで。

 無垢材の椅子に腰掛けながら「ええと……」と、一言 注意を促そうとするも、

「なあに~? 純也ちゃん♡」

 まったく悪気無く、純粋な微笑みを向けてくる母親。


 “朝比奈家の愛情表現” は、

 栄養たっぷり、量も種類も豊富な料理で相手をもてなすこと――


 つまり今の自分は、8週間ぶりの愛息子の里帰りで有頂天になっている母に、もてなされているという訳で。

「……戴きます」

 観念した純也は、大人しく合掌したのだった。

「はい、召し上がれ~~♡」



 母に見守られながら(監視されながら)黙々と自分の好物を胃に押し込むこと、数分。

「マ……ママ~ン……、ご、ごはん……」

 今にもぶっ倒れそうな しわがれた声を上げダイニングに入ってきたのは、5歳下の妹・友実だった。

「はいはい♡ 友実ちゃんったら、2日ぶりに顔見せてくれたわねえ♡ 彫刻は順調?」

「……う゛~~……。いま、いち……」


 5歳下で現在16歳・リセ(高校)1年生の友実は、将来 大学の芸術学部へ進学予定で。

 作品を手掛けている時は、学校に行く事すら忘れ作業に没頭してしまう “困ったちゃん” 

 その度に、純也は妹を部屋から引きずり出し、バスルームへ放り込み。

 半ば廃人状態の少女に無理やり食事を摂らせ、学校へと送り出していた過去がある。


 ぐ~~ぎゅるるるるぅ~~。

 母親譲りの可愛らしい容貌にも関わらず、恥かしげも無く腹の虫を鳴らせる妹。

「友実。創作に夢中になるのはいいですが、女の子は貧血や骨粗鬆症になり易いのだから、衣食住はきちんとしなければなりませんよ?」

 目の前に腰掛けた愚妹を見据え、そう注意を促すも。

 その時になってやっと、2ヶ月も家を空けていた次兄の存在に気付いたらしい友実は、

 ぱっと顔を上げたかと思うと、何故か幽霊を見るかのような瞳を向けてくる。

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