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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

「~~~っ!?」

「……? どうかしましたか?」

 「自分の顔に米粒でも付いているのだろうか?」と、きちんと髭をあたった頬を撫でるも、特に何も無く。

「……っ ママンっ! 純兄が変だよっ!?」

 久しぶりに会った兄を指差し、大げさに恐れおののく不躾な末娘に、

 肉じゃがを よそっていた母は「変~~?」と間延びした声を上げながら首を傾げる。

「なんなのっ!? なんで敬語使うの? キモっ」

 普通にしていれば、タヌキみたいに愛いくるしい顔なのに。

 秋葉原にいそうな “無断でカメラを向けてくるキモヲタ” を蔑むような瞳を向けてくる友実に、

 さすがに傷付いた純也は、銀縁眼鏡の奥の瞳を歪めた。

「……キモって、お前ね……」



 おかしいな。

 エコール(小学校)までは、綺麗な言葉遣いだった筈なのに。

 コレージュ(中学校)に上がってからは周りの影響か、えらく言葉遣いが乱れてしまった。

 せっかく自分が気を配って、幼少の頃から “美しい日本語” を仕込んでやったというのに。



「あら、そういえば。さっきからなんか変だな~? って思ってたのよね、ママンも」

 母の能天気な声に、荒み始めていた気持ちを整えた純也は、2人を交互に見詰めながら口を開く。

「私はこれから四六時中、人の目に触れる立場になります。よって例えプライベートな時間でも、執事として相応しい言動を心掛けようと――」

「で、家でも敬語? うざ。めんどくさ。てか、敬語とタメ口を瞬時に使い分けれないなんて、鈍すぎっしょ!?」

「………………」

 兄は兄なりに努力しているというのに。

 一刀両断してくれた妹に、純也は若干しょげ気味で口を噤(つぐ)むしかなかった。

「まあまあ。お話はお口を動かしながらも出来るでしょう? 2人とも召し上がれ~♡」

「それもそっか。では、いっただっきま~~っす」

 兄を全否定してすっきりした様子の妹は合掌すると、早々にがっつき始めた。

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