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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★

「わっ!? どうして泣くのです?」

「純也ちゃんが~~っ 私の可愛い坊やが~~っっ」

 ふりふりのエプロンで顔を覆った母が、わんわん声を上げて泣き出せば。

「あ~~あ、純兄、ママン泣かした~~。ダッサ」

 母親譲りの垂れ目を眇め、非難の視線を寄越す友実。

「と、とりあえず泣き止んで下さいよ」

「や~~だ~~っ 純也ちゃんが「ママン」って呼ぶまで、泣き続ける~~っ」

 目の前には、自分のせいで号泣する母。

 傍には「なんとかしなよ~」と急かしてくる妹。

 女2人による “針のむしろ状態” に耐え切れず、屈した純也は小さな溜め息を零した。

「……マ、ママン……」

 恐る恐るそう呼べば、

「はあい♡ おかわりかしらん?」

 後半は嘘泣きだったのか。

 エプロンが剥がれ落ちた母の顔には、満面の笑みが宿っていた。

「……(敗…北)……orz」

「ぶはっ 純兄って、将来は絶対 女の尻にひかれるだろね~~!」

 兄の悲惨(?)な行く末を予言した JK悪魔(小悪魔ではない)は、

 情けなく うな垂れる純也を前にケラケラと笑っているのだった。



 その日の夜は、グランゼコールの寮に入っている長兄・克也(23)と2歳下の妹・成実(21)も駆け付けてくれた。

「お~~、朝比奈家の “執事サマ” のご帰還だ!」

 8週間ぶりの愛息子との再会に、相好を崩す父。

「純也。お前、あれだろ~? “執事とお嬢の許されぬ恋” を体現したくて執事になったんだろ~?」

 元ラグビー部の兄は がははっと豪快に笑いながら、細身の純也の背をバシバシ叩き。

「え゛~~、純兄っ エロゲし過ぎっ むっつりスケベ~~っ!」

 昔は「ナル、純兄のお嫁サンになったげるぅ♡」と、お兄ちゃん子だった成実まで、

 まるで変態を見るような目で蔑んでくる。

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