この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
(う゛……。果てしなく お可愛らしい……。でも、駄目なものは駄目です)
「そうです。お片付け、です」
お片付け。
三十路、四十路でも嫌いな人間のほうが多いだろう、その面倒くさい行いに、
3歳児はもちろん、顔を顰めた。
「……やだぁ~~」
「 “遊んだものは片付けてから、次の遊びをする” これは大切なことですよ」
なるべく柔らかく諭した朝比奈にも、イラついたのだろうか。
「やだもんっ 林、片付けといて!」
癇癪を起した小さな王女は命令を下すと、朝比奈から ぷいと顔を反らした。
「ヴィクトリア様」
「………………っ」
若干厳しめの朝比奈の声に、金髪が流れ落ちる肩がぴくりと震える。
「駄目です。自分で片付けましょう」
「………………」
クリスの傍から立ち上がった朝比奈は、完全に臍を曲げてしまっているヴィヴィの前へと歩み寄り、
しゃがんで目線を合わせると、下膨れ状態の幼女を再度 諭した。
「片付けてからのほうが、気持ち良く遊べます。それに玩具も大事に遊んであげれば、長くもちますよ」
「………………」
気のせいか。
膨らんでいたほっぺが、更にその大きさを増した気がした。
彼女のそんな姿が、幼少の頃の妹達の面影に重なり。
銀縁眼鏡の奥の瞳を細めた朝比奈は、白手袋に包まれた右手を差し出した。
「私も お手伝いしますから、ね?」
「……ふぁ~~い」
しぶしぶ お片付けを認めたヴィヴィは、
目の前の大きな掌に、嫌そうに小さな手を乗せたのだった。
暫らくは、その愛らしい唇はツンと尖ったままだったが、
散らばった木製のボウルやら、フライパンやらを広い集める内、機嫌が直ったらしいヴィヴィ。
その様子に ほっと胸を撫で下ろし、元いたクリスの方を振り返れば、
林とクリスの様子は、先程までの朝比奈と同様――
頑張って話し掛ける執事候補と、興味無い事にはトコトン無言を貫く3歳児の、
静かなる攻防(?)が繰り広げられていた。