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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第33章        

(めちゃくちゃ大変じゃない、それ! っていうか、知らない相手にそんな事書くなんて、超恥ずかしいんですけどっ!?)

 灰色の瞳を見開いて絶句したヴィヴィを面白そうに見返したグレコリーは、「わっはっは!」と悪代官のような笑いを上げながらリビングへと消えていった。

「はぁ…………」

 大きな溜息を吐きながらとぼとぼと階段を上るヴィヴィに、隣の匠海からふっと笑いが漏れる。

「お兄ちゃん……会社では怖いってホント?」

 怖い匠海なんて一度も目にしたことのないヴィヴィは、興味本位でそう尋ねてみる。

「いや……ダッドは会社でいつも俺がいない場ではしっかりしているのに、何故か俺のいる前ではうだうだし始めるんだよ。だからしょうがなく『シャキッとして下さい』って尻叩いてる」

 なんだか社長室でそんなやり取りをしている二人の姿が簡単に想像できて、ヴィヴィは声を上げて笑う。

「ふうん~。あれかな? 後継者のお兄ちゃんが来てくれて、ダッド、ホッとしてるんじゃない? お兄ちゃんに甘えてるんだよ」

「普通の親だったら、子供に自分の『社長としての威厳』を見せつけたがりそうだけどな……」

 ヴィヴィの考えにそう言って苦笑した匠海だが、そんなことを言いながらも父の事を心から尊敬しているのはヴィヴィだっていつも傍にいて知っていた。

「ま……ダッド、『普通の親』じゃないから~」

「確かにな」 

 そんな軽口を叩いていると、あっという間に双子と匠海の私室のある3階へと着いてしまった。

「おやすみ、ヴィヴィ。ゆっくりしろよ」

「う、うん……おやすみなさい」

 軽くハグを交わした兄妹は、それぞれの執事が空けてくれた私室への扉をくぐって部屋へと戻った。

「お嬢様。色紙は隣の書斎に置いておきますね」

「あ~~。ありがと~……」

 朝比奈にだるそうにそう返事をすると、ヴィヴィはスケート靴をウォーキングクローゼットの所定の場所にしまい、用意されたバスルームへと消えた。

 練習着を脱いで湯の張られたバスタブへとつかる。その手には防水のスマートフォンが握られていた。ヴィヴィは一つのメールを開き、何度も読み返す。

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