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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第33章
『団体戦、お疲れ様。
そして銅メダル、おめでとう。
ヴィヴィのこと、本当に誇りに思うよ。
今すぐハグして頭を撫でてやりたい。
帰ったら思いっきり抱きしめさせて?』
「………………」
(確かに書いてあるよね……『帰ったら思いっきり抱きしめさせて?』って……)
ヴィヴィは背をバスタブに預けるとずるずると白濁の湯に沈んでいく。鼻の下まで浸かったヴィヴィの眉根は不満そうにキュッと寄っている。団体戦表彰式直後にこのメールを見て飛び上がったヴィヴィからしたら、先ほどの匠海の抱擁は全然想像していたものとは違っていたのだ。
「ん゛~~……」
(サービストークならぬサービスメールだったのかな? それか団体戦表彰式の直後だったから、お兄ちゃんも興奮してメールを打っちゃって、内容覚えてないとか……?)
不気味な唸りを上げながら悶々と考え込んでいたヴィヴィだったが、このままでは眠れそうもなかった。何せ今日屋敷に戻ってから3時間も昼寝をしてしまったので、体はともかく頭はすっきりしているのだ。
(よっし……!)
ヴィヴィはとにかくもう一度匠海に会いに行こうと、さっさと体を洗ってバスルームを後にした。
(匠海が煩いから)髪も乾かし、朝比奈に就寝のあいさつもしたヴィヴィは、モコモコしたクリーム色の可愛らしいパーカーとショートパンツ、ひざ上までのこちらもモコモコしたニーハイソックスというルームウェアに着替えると、意を決して匠海との部屋を繋ぐ扉をノックした。
「はい?」
隣の部屋からくぐもった返事が聞こえ、ヴィヴィはそっと扉を開ける。革張りのソファーに座っていた匠海は酒を飲んでいたみたいで、ジャケットは脱いでいるもののスリーピースのベストとパンツというスーツ姿のままだった。
(うはぁ……か、かっこいい……)
肩幅のある匠海がそういう格好をすると、とてつもなく様になる。しかも仕事帰りという気怠さも手伝って、言いようのない男の色気みたいなものが滲み出ている気さえする。途端に跳ね上がった鼓動に、ヴィヴィはそわそわしだす。
「どうした? 眠れないのか?」
手にしていた書類とシャンパングラスをサイドテーブルに置いて手招きした匠海に、ヴィヴィは扉の陰に半身を隠すようにして相手を見つめる。
「お、お兄ちゃん……」