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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
「あははっ 朝比奈、お馬さん~~」
片付け終わったヴィヴィまで、画用紙を持ってやって来て。
したり顔で お絵描きを始めた幼女を、隣から林が覗き込んでいた。
そして朝比奈は それから10分間も、その情けない被写体を務め上げた。
執事の採用面接の為に はるばる日本まで来たというのに、
双子に “格好の遊び道具” と認定されてしまった朝比奈。
「次は お馬さんごっこ~~」
新たな遊びを見出したヴィヴィが(今度はお絵かきセットを片してから)朝比奈の背によじ登ってくる。
思わず「このお転婆、どうしてくれよう」と心の声が漏れそうになりつつ、
「せめて、抱っこ か おんぶで、手を打っては下さいませんか……?」
泣きを入れた朝比奈に、ヴィヴィは「しょうがないなあ~」と悪戯っぽく笑っていた。
お菓子の時間を挟み、また他の遊びをし。
しかし、その間。
幼女の灰色の瞳が、時折チラチラ自分と林を盗み見している事に、徐々に気付き始めていた。
最初は、何か悪戯を企んでいて、その隙を密かに狙っているのだと思っていた。
しかし、彼女の視線が自分達に注がれるタイミングに、ある共通点を見つけてしまい――
「………………」
(この子は……。ヴィクトリア様は、もしや……)
1時間後。
長かった面接時間が終わりを告げ。
双子の前に跪き、視線の高さを合わせた五十嵐が、まだ3歳の幼子達に最後通牒を託す。
「クリス様、ヴィクトリア様。これから一緒にいたいのは、どちらの執事ですか?」
とても簡潔で残酷な問いに、胃がひくりと疼いた。
正直なところ、4:6の割合で林が優勢だと思った。
何故なら、自分はヴィヴィを叱ってしまったから。
幼児というのは、そういう所に物凄くシビアだ。
五月蠅い、面倒臭いと思う執事など、自分から好んで傍に置きたいとは思わないだろう。
しかし「主を甘やかす事が、執事の職分ではない」……。
そう、私は思うし、そうありたいから。