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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第114章 ★★2015年 バレンタイン企画★★
バレエ教室の発表会に向け、それまで双子で必死に、
『くるみ割り人形』より “金平糖のパ・ド・ドゥ”
を練習してきたのに。
本番の楽屋裏で、ヴィヴィがいきなり、
「ヴィヴィとクリス、入れ替わってお客さんにバレるか やってみようよ~~?」
と、とんでもない悪戯を双子の兄に迫り。
あまりの事に混乱を来したクリスが、白タイツの上から “金平糖の精のチュチュ” を着始めたのを、
朝比奈が必死に止めた、苦い(?)想い出。
7歳の頃。
フィギュア初級の試合に出始めた双子。
演技時間は たったの1分だが、
その中でジャンプ4つ、スピン1つ、ステップ1つと、兎の様に ぴょんぴょん演技する姿は微笑ましく。
生まれて初めての公式戦。
クリスは緊張の為にジャンプを2回転倒し、試合後もずっと落ち込んで。
声を上げる事も無く、静かに涙で頬を濡らしていた。
一方のヴィヴィは「キンチョウ? なにそれ、新しい防虫剤?」と言わんばかりの肝の座り方で。
表彰台の一番高い所に上り、家族みんなを「あっ」と驚かせた。
クリスが「おにいちゃま」呼びを卒業し、匠海を「兄さん」と呼び始め。
当の匠海が1週間ほど、
「「おにいちゃま」の方が、可愛いのに……ブツブツ」
と残念がっていた事も。
初等部高学年に上がるまでは、ハグを強請られたり「膝枕して~」と甘えられたり。
まるで子犬のように「構って 構って」攻撃をしてくる双子は、とんでもなく愛らしく、本当に愛おしかった。
自分には、まだ子供はいないけれども。
息子や娘 同然に、双子を見守り、励まし、時に叱咤し、慈しむ。
そんな己の仕事にやりがいと、大切な児童期を自分が看ている という自覚も芽生えていた。
あっという間に、最短の契約期限であった3年が過ぎ。
気付けば、双子に仕え始めてから8年という歳月が経っていた。
――――
※パ・ド・ドゥ:男女2人の踊り
『くるみ割り人形』より“金平糖のパ・ド・ドゥ”
https://www.youtube.com/watch?v=xCxZpwByGXk