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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第33章
「なんか……『ハグ』っていうより、『抱っこ』に近くない……?」
文字通り持ち上げられ抱っこされているヴィヴィは、少し不服そうにそう言い募る。
「そうともいう」
と言いながらヴィヴィの体を床に下した匠海は、少しだけ体を離した。覗くように自分の胸の中を見下ろせば、頬を薔薇色に染めて可愛らしく唇を尖らせているヴィヴィがいる。
「団体戦、お疲れ様」
全てを包み込んでくれるような暖かい声に顔を上げたヴィヴィは、ふっと頬を綻ばせた。
「忙しいのに現地まで応援に来てくれて、ありがとうね」
瞳を細めてそう礼を言うと、匠海が大きな手で頭を撫でてくれる。
「弟と妹がオリンピックメダリストになった瞬間に立ち会えたんだ。兄としてこれ以上の幸せはないよ」
匠海からの嬉しい言葉に、ヴィヴィは自分からギュッと兄の腰にしがみ付くと頭だけ上を向いて幸せそうに匠海に微笑んだ。
「ホント?」
「本当だよ。おめでとう」
祝福の言葉とともに額に軽くキスを落としてくれた匠海に、ヴィヴィは瞳を細めた。
「そういえば、整体に行ってきたんだって?」
「あ、うん。ちょっとね……」
ヴィヴィは無意識に匠海から視線を逸らす。
実はヴィヴィには平昌のリンクの氷が柔らかすぎて、そのせいか団体戦のFP直後から膝に違和感を覚えていたのだ。
「まさか、痛めたのか――?」
焦ったようにヴィヴィの体を離し身を屈めて顔を覗き込んできた匠海に、ヴィヴィは小さく首を振って見せる。
「う、ううん! なんかちょっとだけ膝が炎症してる感じで……痛みはないの」
そう言ったヴィヴィの体がまた宙に浮き、視界が揺れる。
「え……っ!?」
驚きの声を上げたヴィヴィは、いつの間にソファーに座らされていた。
目をぱちくりとさせたヴィヴィがすぐ傍にいる匠海を見上げる。そして視線を徐々に下す。自分の両膝の下にはスーツを纏った匠海の張りのある片方の太もも。そしてもう一方の太ももは、ヴィヴィの背を支えるように立膝を立てている。
そう、ヴィヴィは文字通り匠海の股の間に横向けに座らされていた。2年前までのヴィヴィの特等席だったそこに――。
「――……っ!?」
(なっ……なんで――!?)