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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第33章
ヴィヴィの頬が熱を持ち赤く染まる。今から思えば2年前の自分はまだ中学生だったとはいえ、よくこんな恥ずかしい恰好で兄に甘えていたと思う。
匠海の股の間に座って、互いの熱が伝わりそうなほど近くて。その上あの頃は兄の逞しい胸に凭れ掛かってその日起こった他愛のない話を延々と聞かせていたのだから――。今同じことをやれと言われたら、ヴィヴィはきっと憤死することだろう。
「どっちの膝?」
匠海はこの体勢になにも思わないのか、ヴィヴィに痛めた膝はどちらか聞いてきた。
「え……えっと、左膝――」
ヴィヴィが言い終わる前に、匠海はヴィヴィの左の足からモコモコ素材のニーハイソックスをずり下してしまった。
(な、なに…………?)
湯上りの肌が外気に晒され、少しだけ肌寒さを感じたヴィヴィが小さく震える。きゅっと締まったくるぶしまで剥き出しになったヴィヴィの左足をふくらはぎの下に手を添えてそっと持ち上げた匠海は、ヴィヴィを見つめて口を開いた。
「じゃあ、膝が早く治るおまじない」
そう発した匠海はヴィヴィの方に上半身を傾けると、ちゅっと音を立てて妹の膝頭に自分の唇を押し当てた。
(…………え?)
一瞬何が起こったのか分からなかったヴィヴィは、ゆっくりと体を起こしてソファーの背もたれに凭れ掛かった匠海をぽかんと見つめる。確かに自分の膝に感じた、紛れもない匠海のしっとりとした唇の感触――。
躰の中心がきゅんと疼いた。それは今までに感じたことのない感覚で――。
「お、おに……ちゃん……っ!?」
「ん……? もっと?」
ヴィヴィの膝頭に大きな掌を乗せた匠海がそう尋ねてくる。
(も、もっと!? いや、嬉しいけど! お兄ちゃんにキスされて、う、嬉しいけど――っ!)
「そっ!? そ、そうじゃなくてっ!」
ヴィヴィはどもりながらも、匠海の突拍子のないキスの理由を聞きたかったがうまく言葉にならない。困ったように匠海を見上げるヴィヴィに、匠海がやっとキスの理由を説明してくれる。
「ヴィヴィ、小っちゃい頃よく転んでは泣いてたけど、いつも痛いところにキスするとすぐに泣き止んだんだよな」
そう言ってヴィヴィの膝を撫でる匠海にヴィヴィは絶句した。思い起こしてみればそんなこともあった気がする。けれどそれは記憶さえあやふやになるほどずっとずっと昔のこと。