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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第35章    

 振付師の宮田の言葉が脳裏に浮かぶ。腰骨の高さで指先までぴんと揃えた左手の上に、まるで扇子を置くように右手を添える。そして両手をしっかり後ろへと引くとフリーレッグを振り上げて三回転半回りきり、着氷した。

 ヴィヴィの鼓膜を割れんばかりの喝采が震わす。いつもは演技中にあまり周りの音は入ってこないのだが、今日は妙に五感が鋭いようだ。

 そして間髪入れずにステップからのトリプルルッツ、トリプルトゥーループ。

 ランディングの勢いを殺さずにフライングスピンへと入る。レイバックスピンは日舞の所作を応用している。後ろに高く反らした左足に、左脇腹を絞め左肩を落とし左に視線を送りながら回転するとても重心が取りにくい宮田のオリジナルだ。そこからワンハンドビールマンへとボジションをチェンジさせ、きっちり既定の回転数を回りきる。

 回転を終えて次の動作へと移るヴィヴィは、耳をそばだてて音楽を懸命にひろう。実はこのプログラムで一番ヴィヴィが苦手にしていたのは次だった。

 両脚を左右に開脚して滑走するイーグルの後に、即座にバレエジャンプを組み込み、その後すぐにクロスグラブビールマンスパイラル――という振付。

 各エレメンツ自体はそれほど難度は高くないのだが、限られた拍数の中で一秒のミスもせずに一連の流れを行いながら、なおかつ迫力あるジャンプを入れなければならない。

 ヴィヴィはイーグルをしながら頭の中でカウントし、ひゅっと息を吸い込む。

(1と2と3と4と――っ!)

 右足のトウを使って両足で踏み切り、上体を大きく背のほうへと反らす。左足を大きく振り上げて空中で開脚姿勢になり、後ろへ反らした上半身と伸ばした両腕が後ろ足と平行となったことを確認すると、左足トウから降りる。

 そしてすぐに右手で左足のブレードを握ると、スムーズにクロスグラブビールマンスパイラルへと移行する。

(やった!)

 見事一秒のズレもなく成し遂げた一連の繋ぎに、ヴィヴィは胸の中でガッツポーズをした。

 曲は篠笛や箏といった雅な音楽から一変、和太鼓と鳴物のみの力強いものへと変化する。リンクの端へと移動していたヴィヴィは、今までの優美さはかなぐり捨て力強さ全開で細やかなステップを踏んでいく。

 エッジを深く倒し一つずつ丁寧に熟しながらも、スピードは落としてはならない。

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