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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第36章
「この方は実は上のお兄さんなんですね? 顔をみてほっとしてしまいましたか?」
面白そうにヴィヴィに聞いてくるアナウンサーに「はあ……」と情けない返事を返したヴィヴィに代わり、クリスが、
「ヴィヴィはお兄ちゃん子なので……」
とあまり言い訳になっていない言い訳をしてくれる。
その後も各局で同じ映像を流されたヴィヴィは最後には「もう勘弁してください」とぐったりし、周りの笑いを誘った。
翌日も朝から各局の中継に出演した双子は、日本代表の水色のジャケット、ネクタイ、白いスカートとパンツに身を包み懸命に質問に答えていた。
「まだ3月の世界選手権が残っていてなかなかゆっくりとした時間が取れないでしょうが、今一番何をしたいですか?」
本日最後の夜のニュース番組に出演した双子に、モニターの向こう側からそう質問が投げかけられる。
「じゃあ、ヴィクトリアちゃんからどうぞ」
五輪ブースにいるアナウンサーから、ヴィヴィに答えを求められる。
「私は家に帰って、家族でご飯が食べたいです」
そう迷いなく即答したヴィヴィに、アナウンサーが意外そうに質問を投げる。
「え? それが今一番したいことですか? 例えば、自分にご褒美を買ったり、どこかへ行ってみたりなどは?」
アナウンサーの質問に、ヴィヴィはふるふると首を振って否定する。
「シーズン中は私もクリスもマム……コーチも、皆と生活スタイルが合わないから、なかなか一緒に食事を取れないんです。だから、皆でゆっくり食事がしたいです」
「僕も……」
激戦を終えた二人はそう言ってリラックスした表情になると、顔を見合わせてニコリと笑ったのだった。