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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第37章
学校から直行でリンクへと向かった双子は、世界選手権へと向けた密度の濃いレッスンを受け、篠宮邸に帰り着いたのは深夜だった。
朝比奈が開けてくれた玄関ホールの扉をくぐるとヴィヴィは、
「じゃあクリス、朝比奈、オヤスミ!」
と就寝の挨拶をして、ダッシュで私室のある3階へと駆け上がった。
「お嬢様! 屋敷内で走られては、はしたないですよ!」
背中に朝比奈の小言が飛んできたが、そんなのに構ってなどいられない。
ヴィヴィは3階へと上がると自分の私室の扉の前を素通りし、その隣にある匠海の部屋の扉をノックした。
「はい。お待ちください」
そう返事をして扉を開いてくれたのは、匠海の執事である五十嵐だった。五十嵐がヴィヴィを認めて瞳を細めて微笑む。
「お嬢様、お帰りなさいませ。そして、優勝おめでとうございます」
「ただいま & ありがとう、五十嵐!」
平昌から帰国して初めて顔を合わせる五十嵐にそう挨拶してにこりと微笑むと、中に通された。
「匠海様。ヴィクトリア様がお戻りです」
五十嵐はヴィヴィにソファーを勧めると、書斎にいるらしい匠海を呼びに行く。
「ああ。じゃあさっきの件、確認を頼んだよ」
書斎から落ち着いた匠海の声だけが漏れ聞こえ、ヴィヴィはスカートに置いた手をきゅっと握りしめる。
「畏まりました。では、お休みなさいませ」
五十嵐はヴィヴィにも就寝の挨拶をすると、匠海の私室から出て行った。一分ほどして、匠海が書斎から出てきた。今日も会社に行っていたのだろう。スーツ姿のままだった。
「待たせたね、ヴィヴィ」
リビングの黒皮のソファーに腰かけていたヴィヴィは、ぴょんと立ち上がって匠海に向き合う。
「ううん。今、お邪魔じゃない?」
ヴィヴィは匠海の仕事を中断させてしまったのではと、心配そうに首を傾げる。
「大丈夫。もう終わったよ。あれ、制服?」
ヴィヴィのいるソファーに近寄ってきた匠海が、白シャツと紺のニット、紺と赤のタータンチェックスカートのヴィヴィを見て聞いてくる。
「うん。今日学校から直でリンクに行ったから」
「そうか、おかえり。ハーブティー飲む?」