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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第38章
帰国してからたった2週間後――3月10日からは、ロシア=モスクワにて世界選手権が行われた。
女子シングルではユリア・リプニツカ、エリザベータ・トクタミシェル、アデリナ・ソトニコスといった地元ロシア勢が金メダル有力候補と言われていた。
しかし周りの予想に反し、手堅い演技でSPもFPも纏めたヴィヴィが、オリンピックと世界選手権の2冠を達成した。
そして精度の高い4回転ジャンプと演技力で向かうところ敵なしのクリスは、周りの予想通りに危なげなく優勝した。
4月11日から行われた国別対抗戦にも出場した双子は、健闘の甲斐あって、昨年より一つ順位を上げて見事銀メダルを獲得した。
そんなこんなで牧野マネージャー曰く、双子が出場する試合は視聴率が鰻上りとなっているらしい。そうなるともう「うちもスポンサーにならせてください!」「当社のCMにぜひ!」とのオファーが殺到する。
双子は「よく分かんない~」と牧野が所属するマネジメント会社INGに丸投げし、厳選してくれた会社と契約してCM撮りもした。
その中で双子を驚かせた事が2つあった。
1つめは、英国の乳製品メーカーMüllerとのCM契約だった。
「僕達、日本のスケ連所属なのに……?」
日本人スケーターと英国企業の異例の契約に、意外そうにクリスが質問する。
「君達はオリンピックが終わってから、BBC(英国の国営放送)にも出演しただろう? もう日本のフィギュア人気だけでなく、世界のフィギュア人気をも背負っている――その表れだよ」
そう説得した牧野に双子は「「世界の客寄せパンダ……」」と、あっけにとられるしかなかった。