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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第38章       



『あれ~? 私のヨーグルトがないよ~?』

 白いふわふわのワンピースを纏ったヴィヴィが、スプーン片手に白い冷蔵庫を覗き込む。

『…………』

(まずいまずい。見つかったら取られちゃう……)
 
 スプーンをくわえながらキッチンから抜き足差し足で逃げる、白シャツに白の蝶ネクタイ、白のハーフパンツのクリス。

『あ! こら、クリス~! 私のCorner返して~っ!』

『やだ……っ!』
 
 スプーンを振り回して白いキッチンの中を追っかけまわすヴィヴィと、逃げ惑うクリス。
 
 最後はカメラ目線のクリスがスプーン片手に、

『DHA成分配合でさらに美味しく健康に!』
 
 その背中に飛びついたヴィヴィが、

『Müller のFruit Corner新発売!』
 
と弾ける笑顔で宣伝して終わっている。




 4月から高校生2年生になった双子にしては、子供っぽい出来のCMだった。

 ただ当の双子のCMに対する感想は

「「画面が白い……」」

と、たったの一言だった。

 しかし英国本国では「双子の白い仔犬が戯れているみたいで、可愛い」と人気で、売上にも貢献しているらしい。

 航空会社や製薬会社、化粧品会社、食品会社……と結局10社と契約した双子は、

「これでマムにコーチ代払えるね!」

「ね……」

と大いに喜んだのだった。

 双子を驚かせたこと2つめは、国別対抗戦の2日後に行われた皇室主催の「春の園遊会」に、スケート団体戦の皆と招かれたことだった。

 女性陣が「お着物で参加しようよ!」と盛り上がったので、自分は着物が似合わないと思い込んでいるヴィヴィもしぶしぶ着用していった。しかし着物を頼んだスタイリストが有能だったらしく、金髪がくすまず、尚且つ春らしい素敵な色味の着物のお陰で、周りからは好評だった。

 当日、最前列に並ばされたフィギュアチームは、皇室の方々にオリンピックでの健闘を讃えられ、後に皆で「光栄だ~!」と盛り上がったのだった。

 しかしどんなに派手で華やかな行事やイベントが目白押しであろうと、ヴィヴィの心の中はただ一つの事がずっと占めていた。






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