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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第38章
4月18日、土曜日。
その日もいつも通り早朝からリンクで練習したヴィヴィは、クリスと篠宮邸へと帰宅すると匠海と朝食を取っていた。
久しぶりにゆっくりとシェフの和食を堪能したヴィヴィは、顔の前で「御馳走様でした」と両手を合わせた。そばに控えていた朝比奈が、食器を下げてくれる。
「クリス。今日、ヴィヴィ借りるから」
朝食の締めに匠海がコーヒーを、ヴィヴィが緑茶を、クリスが紅茶を飲んでいると、おもむろに匠海がそう口を開いた。
「…………?」
不思議そうに目の前に座っている匠海を見返すクリスに、テーブルに頬杖を突いた匠海がにやりと人の悪そうな笑みを浮かべる。
「俺、今日、ヴィヴィと『デート』なの」
「「――っ!?」」
ヴィヴィは口を付けていた緑茶を吹き出しそうになり、クリスは目を丸くして匠海を見返す。
(お、お兄ちゃん……?)
ヴィヴィは別に、家族に秘密で匠海とデートしようと思っていたわけではない。だが、わざわざ自称シスコンのクリスだけにその事実をこんな形で伝える匠海の表情は、とても楽しそうだった。
(お兄ちゃん……私だけじゃなく、クリスのこともからかっちゃうんだから……)
ヴィヴィは傍観者を決め込んで、抹茶色の緑茶に口を付ける。隣のクリスはというと、匠海とヴィヴィを交互に見て暫らく黙り込んでいた。
しかしその一分後、クリスがワンピースの袖越しにヴィヴィの細い二の腕を掴んだ。
「ク、クリス……?」
ヴィヴィが驚いた声を上げる。こちらを見下ろしてくるクリスの顔が思った以上に怖かったのだ。
「兄さんだけ、ずるい……」
「え……? あ、じゃあ、クリスも今度、する?」
「する……に決まってる」
そう答えたクリスの唇が心なしか尖っていた。
(クリス……可愛い……)
よく拗ねた時に自分も唇を尖らせる癖があるので、同じ仕草をしたクリスに心の中で苦笑する。
「分かった。どこ行くか今度考えようね?」
そう言ってヴィヴィが微笑めば、クリスは溜飲を下げてヴィヴィから手を離した。