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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第38章
私室に戻ったヴィヴィは、一週間前から吟味して選んだ洋服に身を包んで大きな姿見の前に立った。胸の下に細いリボンの切り替えしがある、Aラインの小花柄ワンピース。
実はヴィヴィの服は全て朝比奈が用意をしている。
スポーツウエアに関しては朝比奈から「どういうものが良いですか?」と助言を求められることはあるが、普段着や外出着は全て執事が用意したものを、文句なく着ている。
その中でデートに相応しい、フォーマルになりすぎず少しだけカジュアルなものを選んだのだ。
ノーカラーのスプリングコートを朝比奈に着せてもらい、ウェッジソールのサンダルを履くと、匠海が待っている玄関ホールへと降りた。広い玄関ホールに据えられたソファーで既に待っていた匠海が、ヴィヴィと朝比奈に気づき腰を上げる。
「おや、くるくる……」
匠海がヴィヴィの暗めの金髪がいつもよりふわふわな事に気づき、手を伸ばして触れてくる。
「朝比奈に『デートなの』って言ったら、巻いてくれたの」
後ろに立つ朝比奈をちらりと振り返ると、朝比奈は小さく礼をした。
「可愛いよ」
くるくるに巻かれた髪をいじっていた匠海が、ヴィヴィをそう褒めて瞳を細める。
「ありがとう! お兄ちゃんこそ、そういう格好、初めて見る気がする……」
ヴィヴィはそう言うと、匠海の頭の先からつま先まで目を真ん丸にして見つめた。
キャメルのショールカーディガンにボルドーのVネックのインナー。下はオリーブの細身カーゴパンツと焦茶の皮ブーツという、匠海にしてはカジュアルなコーディネートだった。
いつも大学へ行くとき屋敷にいるときも、シャツや綺麗めのニットを着ていることが多かったので、とても新鮮に映る。
「ヴィヴィとのデートだから、俺も『おめかし』してみた」
「ふふ。格好良いよ」
連れ立って玄関ホールを出ると、車寄せに匠海の黒いBMWが停められていた。傍に匠海の執事・五十嵐が控えている。
「本当に? 隣に並んで歩いてくれる?」
「もちろん! 周りに『私のお兄ちゃん、格好良いでしょう?』って自慢しながら歩きたいくらい」
苦笑した匠海が助手席の扉を開け、ヴィヴィを乗せてくれる。
「いってらっしゃいませ、匠海様、ヴィクトリア様」