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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第38章
匠海がそう誉めてヴィヴィの頭を撫でてくれる。しかし店員に「じゃあ、次はこれと合わせてみて」と違うトップスを手渡されて、また試着室へと放り込まれた。
「………………」
ヴィヴィは大人しく次のトップスに袖を通すと、また同じように外へと出る。
大きく襟の空いた透け感のある黒シャツの下には黒いベアトップ、裾はショートパンツに入れて細いゼブラ柄のベルトを巻いたコーディネートに、匠海が驚きの声を上げる。
「へ~、印象変わるな。大人っぽい」
「そ……そう?」
ヴィヴィは小さく首を傾げる。
「今日着てきたコートにも合うね~。じゃあ、次これね!」
店員はそう言うと、また新たなトップスをヴィヴィに渡して試着室へと押し込んだ。
「………………」
ヴィヴィは目をぱちぱちと瞬かせて暫しぼうとその場に突っ立っていたが、やがて着替え始めた。
(郷に入っては、郷に従え……?)
109どころか、こうやって店に出向いて服を選んだことがほとんどないヴィヴィは、滅多にない体験を楽しもうと気持ちを切り替えて試着室から出た。
「このニットはね~、バックスタイルがイケてるの!」
店員はそう言うと、ヴィヴィにその場で一周させてみせる。
丈の長いキャメルのドルマンニットは、背中が大きく開きリボンがクロスしているのが少しだけ大人っぽい。
「うん、これだね!! スィート&適度な露出の鉄板コーデで、カレシも悩殺!」
店員がにかっと笑って大きく頷く。
「か……彼氏って……」
ヴィヴィがあわあわと匠海を見上げれば、匠海は悪戯っぽい表情で、
「悩殺されました」
とうそぶいてくる。
(嘘ばっかり……でも、嬉しいから、いいや……)
ヴィヴィは目の下をポッと赤らめながら、匠海から見えないよう俯いてはにかんだ。
「じゃあ、これ一式下さい。このまま着て行くので、着てきた服を包んでもらってもいいですか?」
匠海が店員にそうお願いすると、店員は手際よく服を包んでくれる。お会計も当然のように匠海が済ませてくれる。
「あ、ヴィヴィ、自分で払うよ!」
「駄目。デートなんだから、俺がプレゼントするの」
ヴィヴィがあたふたとバックから財布を取り出そうとすると、匠海は大きな掌でその上から押さえてしまった。
「で、デートって、そういうものなの……?」