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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第38章
「ヴィヴィっ? あんた、今109にいるでしょ?」
開口一番勢いよくそう聞いてくるカレンに、ヴィヴィは驚く。
「え? ど、どうして知ってるの?」
「Twitterに目情めっちゃ出てるよ。イケメンと一緒にいるって! もしかしてお兄さんと一緒? からまれないよう気を付けてね」
「あ、ありがと。取り敢えず、切るね!」
心配して連絡をよこしてくれたカレンに礼を言い、ヴィヴィは通話を切った。
「Twitterに、書き込みがあったんだって。『109にイケメンと一緒にいる』って……」
困ったように匠海を見上げ、カレンからの電話の内容を伝える。
「ああ、だからか」
「ごめん……」
ヴィヴィはせっかくの匠海とのデートで、匠海に1度ならず2度もこんな目に合わせてしまったことを謝る。
「別にヴィヴィが謝ることじゃないだろ。それだけ影響力があるってことだよ、オリンピックの金メダルは――」
優しい微笑みと共にそう返してくれた匠海に、ヴィヴィは頷く。
「ヴィヴィ、行ってくるね。お兄ちゃん、先に駐車場へ戻っててくれる?」
「馬鹿。男もいるみたいだし、一人じゃ心配。俺もいるよ」
「え、でも……」
「一緒にいた『イケメン』はただの実兄だったって、説明しておいたほうが、後々いいでしょ」
「う、うん……」
結局匠海に背を押されてエントランスから外へ出たヴィヴィに、またスマートフォンのカメラが一斉に向けられる。
「あ、出てきた~!」
「わ~、リアルも超可愛い!」
「握手してくれませんか?」
一人がそう言いだすと、皆が我も我もとヴィヴィに握手を求めてきた。ヴィヴィは出された手をなるべく丁寧に握り返して、アイスショーで培った営業スマイルを浮かべた。
「肌白! 顔ちっちゃっ! 足長っ!」
そう言われるたびに、ヴィヴィは心の中で「どう返すのが正解なんだろう?」と困ってしまう。
「お兄さんも、超イケメンだね~」
握手をし終えた子達が口ぐちにそう言って、ヴィヴィの後ろの匠海を見てくる。
「え……どうして、兄の事……?」
ヴィヴィは咄嗟に「匠海がイケメン」と言った女子高生に尋ねた。
「テレビでお兄さんに抱き着いて号泣してるとこ、流れてたでしょう? マジ池様って有名だよ?」
女子高生は物怖じせずにヴィヴィにそう返してくれた。