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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第38章
灰色の瞳を瞬かせて見上げてくるヴィヴィの白い頬をさらりと撫で上げると、匠海はハンドルを握って車を発進させた。
「…………?」
ヴィヴィは具体的に行先を教えない匠海から視線を外すと、車の進行方向へと視線を戻した。車が暗い地下駐車場から滑り出て、日の光に満たされた公道へと進んでいく。
道すがら、ヴィヴィの視線に世界的に有名な某ブランドの路面店が目に入る。
店頭の大きな広告パネルに印刷された、外国人の男女の写真。
洗練されたドレスに身を包んだ女性が男性の首に縋り付き、スーツ姿の男性が女性の顎に指を添えて、今まさに口づけをする瞬間の写真――。
それを見た途端、ヴィヴィの脳裏にフラッシュバックが起こった。
白一色のファブリックで統一されたベッドルーム。
そこにいるのは、華奢なヴィヴィの腰を掴み、深々と己の欲望で貫く匠海の姿。
緩急を付けて出し入れされるそれに翻弄されながら、甘い声を上げて首にしがみ付く自分。
『あぁ……――っ! お、兄ちゃ……凄、い……あぁん、は、ぁんっ……!』
『ヴィヴィ……気持ち、いい? 凄く、濡れてる……』
匠海がヴィヴィの膣(なか)を掻き回すように、細腰を自分の上でぐりぐりと回して擦り付ける。
『あっ!? ……っ だ、ダメ……それ、駄目……っ ふぁあ……ぁああっ……!』
ガクっと前につんのめったヴィヴィの体が、一本の腕に支えられる。
直前まで白昼夢を見るように2年前に見た妄想を繰り返していたヴィヴィは、キキッと響いた鈍いブレーキ音に、はっと現実に引き戻された。
自分の肩に延ばされた、匠海の逞しい右腕。
それを辿って行けば、少し焦った表情で前を見ている匠海がいる。
「悪い……急に子供が飛び出してきたから」
そう言われて匠海の視線の先を辿れば、幼稚園くらいの男の子が母親らしき女性に両脇を掴んで持ち上げられていた。女性は歩道へと戻ると、ぺこぺこと運転席の匠海に向かって謝ってくる。
匠海は小さく手を挙げてみせると、また車を発進させた。ヴィヴィを支えていた腕が離される。
「どうした……?」
まっすぐ前を見て運転している匠海が、不思議そうにそう尋ねてくる。
「え……?」
ヴィヴィは何を指してそう言われたのか分からず、バックミラー越しに匠海と視線を合わせる。