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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第39章
長い脚をびしょ濡れにして岸まで戻ってきたヴィヴィを、匠海が相好を崩して迎え入れる。ヴィヴィが不承不承拾った流木を差し出すと、匠海は大きな掌でヴィヴィの頭を撫でくり回し「Good Job、ジョン!」と褒めた。
(ジョンって、誰やねん……)
ヴィヴィは心の中で久しぶりに関西弁で突っ込む。
「お兄ちゃん、手、出して」
「何……?」
ヴィヴィのその声にとっさに手を差し出した匠海に、ヴィヴィは後ろに隠していたものを乗せた。
にゅるっとした黒い物体が何であるかを認識した匠海が、咄嗟にわっとその手の中のものを振り払った。
「うわっ!? とっ、わっ……!?」
驚きと恐怖の紙一重の叫びを上げた匠海は、あろうことか体勢を崩し、波打ち際で尻餅を付いてしまった。
ばしゃんと派手な音と水飛沫が上がる。
「あははははっ!!」
その無様な様子を見て、ヴィヴィがお腹を押さえて笑う。
「……――っ ヴィヴィっ!!」
「ほ、ホントに苦手なんだね、ナマコ!」
ヴィヴィはしてやったりと思いながら、爆笑する。
匠海は何故か子供のころからナマコが大嫌いだった。触るのも、勿論食べることさえ出来ない。
一方の匠海はというと、信じられない表情で灰色の瞳を大きく見開いて妹を見上げていた。
「俺は、着替えないんだぞっ!?」
「あ、はははっ!」
恨めし気にそう叫ぶ匠海だが、自分の悪戯が見事成功したヴィヴィは笑いが止まらず、目尻に涙を浮かべながら笑い続けていた。
どんよりしながら起き上った匠海は、お尻の部分がびしょぬれで海水がしたたり落ちている。
「し、下着まで濡れた……」
がっくりと項垂れながら泥だらけになった手を海水で洗った匠海を、
「ふふ~。いっつもヴィヴィとクリスをからかってばかりいるから、天誅が下ったんだよ!」
とヴィヴィが指をさして笑い飛ばす。その能天気な笑顔に、匠海の表情が一変した。
「この、じゃじゃ馬めっ!!」
匠海はそう叫ぶと、目の前のヴィヴィの両脇に腕を入れてひょいと持ち上げた。
「えっ!?」
いきなりの出来事に、ヴィヴィが驚きの声を上げる。
匠海はそのまま自分の肩にヴィヴィを担ぎ上げると、その両太ももを片手で支え、何故か海へとじゃぶじゃぶ勢いよく入っていくではないか。