この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第39章
「えっ! ちょ、お兄ちゃんっ!?」
ヴィヴィが驚愕の声を上げるが、匠海は歩を止めなかった。くるぶしまでしか織り上げていなかった裾は、すでに海水に浸かっている。
「何が天誅だ! この悪戯っ子! 俺と同じ目に合わせてやる!」
そう恐ろしい発言をした匠海の肩の上で、ヴィヴィは「ひっ!」と悲鳴を上げた。
もう匠海の膝上位の深さなのに、そんなところに放り出されたら、下だけでなく全身びしょ濡れになってしまう。
ヴィヴィには家から着てきたワンピースという着替えがあるとはいえ、下着の替えはなかった。
「い~や~っ!!」
ヴィヴィは自由になる膝から下だけをバタバタと動かし、両腕で匠海の背中をポスポス殴った。
「こら暴れるな、落っことすぞ?」
そう言われ、ヴィヴィはぴたと硬直する。
「もう、こんな悪戯しないか?」
匠海の質問に、ヴィヴィはうんうんと大きく頷く。
「俺の言うことを聞く、良い子になれるか?」
「な、なりますっ!」
素直にそう答えたヴィヴィに、ようやく匠海が立ち止ってくれた。
「本当に? 嘘つきはお尻ペンペンするよ?」
「お、お尻ペンペンっ!?」
(わ、私、一応、花も恥じらう女子高校生なんですけどっ!?)
匠海の信じられない言葉に、ヴィヴィは真っ赤になった。
(ていうか、太もも、撫でまわさないでっ!)
無意識にか、挑発してか、匠海が手を添えていたヴィヴィの太ももの裏側をさわさわと、こそばす様に撫で上げている。
「わ、分かったから……! お、お尻イヤっ!!」
そう言って泣きべそのような声を上げたヴィヴィに、匠海はぷっと吹き出すと元来た道を戻り始めた。
踝までの深さに来てようやく下してくれた匠海から、ヴィヴィはとっさに距離をとる。
「お、お兄ちゃんの、えっちっ!!」
小さな顔を真っ赤にし涙を浮かべて今日2回目のその抗議するヴィヴィを、匠海は不遜に笑い飛ばした。
「あ~あ……ズボン、びしょ濡れ……」
濡れたズボンが気持ち悪いのか、匠海は嫌そうな声を上げて砂浜へと上がっていく。
「ご、ごめん……」
今更ながらにして、あまり先のことを考えていなかったヴィヴィは、しゅんとして後に続く。
「で……? お願いって何?」
背中を向けたままの匠海が、ヴィヴィにそう尋ねてくる。