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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第39章
大きな扉が後ろにいた匠海により開かれ、すっと室内に風が入り込んだ。
広い玄関の先には、ガラス越しに水平線が広がっていた。
ヴィヴィはサンダルを脱いで中に入ると、そこには2階まで吹き抜けで一面ガラス張りのリビングがあった。
「うわ~。こんなに見晴らしよかったかな?」
ヴィヴィはそう言いながら、リビングの大きなガラス戸を開く。
その途端、涼しい海風と波の音が部屋に入ってきた。別荘は海沿いの丘の上に立っており、目の前には水平線が広がっている。
広大なウッドデッキには、Lの字型の黒い籐編みのソファーがあり、何故かその上には白い布地のクッションがすでに置かれていた。
(あれ……? 先に誰か、来てたのかな?)
そう言えば、久しぶりに来た割には部屋の隅々までピカピカに磨き上げられていた。もしかしたら別荘の管理人がいて、メンテナンスをしてくれているのかもしれない。
「ヴィヴィ、シャワー浴びる?」
匠海はもしかしたら何度か訪れているのか、ヴィヴィのような驚きの声を上げることなく、ヴィヴィにそう尋ねてくる。
「お兄ちゃん、先どうぞ。ヴィヴィ、後で足洗う」
「了解」
バスルームと思われる方へ姿を消した匠海の後姿を見守っていたヴィヴィは、待っている間に別荘の探検をすることにした。
2階はバストイレ完備の6個のベッドルームがあり、1階は大きなキッチン、ランドリー、今匠海がいるメインのバスルーム、グランドピアノが置かれた広いリビングとダイニング。
久方ぶりの別荘だったが、見て回るとどんどん昔の記憶が呼び起された。
広い室内でクリスとかくれんぼをしたこと。
ウッドデッキで家族みんなとバーベキューを楽しんだこと。
確か、匠海は夜にする打ち上げ花火が大好きだったはず。
打ち上げられたパラシュートが月明かりの中ふわふわと落ちてくるのを、砂浜中を駆け回って3人は奪い合っていたっけ。
ヴィヴィの口元がふっと綻ぶ。
普段は多忙で記憶の彼方に仕舞い込まれていたが、どれも楽しくて、大切な思い出ばかりだ。
「ふう、気持ちよかった」
気が付くと、匠海がリビングに入ってきていた。着替えがないので黒いバスローブを着ている。