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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第39章
「お洗濯するの?」
ヴィヴィが汚れた服の心配をすると、
「今、洗濯機に放り込んだ。帰るころには乾燥してるだろ」
と匠海が返してくる。
「そっか。良かった。じゃあ、ヴィヴィも足洗って来よう」
先ほど海で洗ったが、やはり少しじゃりじゃりするのでヴィヴィはバスルームへと行ってショートパンツから伸びた長細い足を洗って戻った。
「あれ……お兄ちゃん、何してるの?」
リビングに戻ったヴィヴィは、キッチンにいる匠海にそう声をかける。
「何って、ランチ作るにきまってるだろ?」
「えっ!? お兄ちゃん、料理できるの?」
ヴィヴィが驚きに灰色の目を丸くする。
「まあ、普通には」
「な、なんで?」
篠宮邸にはお抱えのシェフがいるので、家で作ることはない筈だ。
「初等部から高等部まで、調理実習あったから」
匠海の通っていた有名私立と同じく、双子の通うBSTでも初等部からずっと調理実習はある。けれど、
「それだけで、料理って出来るもの?」
「もともと器用だからね、俺は」
匠海はそう言って鼻で笑うと、冷蔵庫の中を覗いた。
「実は、さっきの電話で管理人に食材を用意しておいてと、連絡しておいたんだ」
「あ……東急の駐車場で?」
「そう。あ、アンチョビあるな……パスタにするか」
匠海はてきぱきと冷蔵庫から食材を選び出し、調理にかかった。
ヴィヴィはやることがなくて、その周りをちょろちょろとしていたが、キッチンの外の窓に目をやる。
「あ、お兄ちゃん、なんかお野菜なってる」
ヴィヴィはそう言って外の庭を指差した。匠海が横から覗き込む。
その途端、爽やかなボディーソープの香りがヴィヴィにまで届き、ヴィヴィの胸が小さく疼いた。
「お、バジル生えてる。ヴィヴィ、取ってきて」
「わ、分かった~」
ヴィヴィは動揺を隠すように明るく返事すると、玄関までサンダルを取りに行って、キッチンの扉から庭へと出た。
目ぼしいハーブを見つけて積んで戻ったヴィヴィに、匠海が首を振る。
「ヴィヴィ、これはミント」
「あれ?」
「バジルはもっと大きい葉っぱのやつ。ちぎってみて、香りがジェノベーゼに近いやつ、取ってくればいいよ」
「なるほど!」
匠海の的確な指示で、ヴィヴィは言われた通りのバジルを探し当て、取って戻った。