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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第39章
「何?」
「あのね……初『デート』でガーリックは、厳禁じゃない?」
「あ……」
匠海がしまったという顔をする。
「まあ、本当の初『デート』の時は、気を付けるということで……」
小さく笑った匠海がそう言うと、ヴィヴィは
「これが最初で最後の『デート』になるかもしれないけれどね……」
と肩を落とした。
その後、納戸から思い出の品を引っ張り出して来たり、思い出話に花を咲かせていると、スマートフォンの着信音が部屋に響いた。
「あ、俺だ……」
匠海はテーブルに置いていたスマホを取り上げると、電話に出る。
「ああ、俺だ……今? 逗子……そう……帰り……? そうだな、多分21時までには帰る……はい」
電話を切った匠海に、ヴィヴィは「おうち?」と尋ねる。
「ああ。五十嵐がディナーいるかって」
「そっか。もう、17時なんだ……」
ヴィヴィは壁に掛けられていた時計を見上げ、少し悲しそうに言った。
「日が暮れてきたな」
匠海が暗くなってきた室内の照明を付ける。
「お兄ちゃん……」
「ん?」
「お兄ちゃんに、渡したいものがあるの」
「渡したいもの?」
「うん。ちょっと待ってて」
ヴィヴィはそう言うとソファーから立ち上がり、カウンターに置いていた自分のバックの所まで歩いて行った。
そして背中にそれを隠して、匠海の隣に戻って座った。
「これ……遅くなっちゃったけれど、卒業祝い」
「え……開けていい?」
「もちろん」とヴィヴィが答えると、匠海が受け取ったプレゼントの包装紙を開けていく。
その中にあったのは、某ブランドのネクタイだった。
いつもお世話になってきた匠海の卒業祝いをどうしても送りたかったヴィヴィは、周りの執事達やスケート仲間に「卒業祝いに貰って嬉しいもの」を聞いて回って(時間がないので)ネットで調達したのだった。
「ネクタイ……使いやすそうな色だな」
ネクタイを見つめる匠海の瞳がふっと綻ぶ。
「お兄ちゃん、卒業、おめでとう! 本当はネクタイなんていっぱい持ってると思うんだけど、やっぱりこの春から本当の社会人でしょ? いくらあっても困るものじゃないかと思って」
「うん、助かるよ。ありがとう……いや、驚いたな……」
匠海はそう言うと、本当に驚いたようにおでこに掌をやった。