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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第39章
「おいで……」
差し出された両腕の中に、ヴィヴィはゆっくりと近づくとその胸の中に納まった。
(好き……)
金色の髪をまさぐるように後頭部に当てられた匠海の掌が、暖かくて心地よい。
細い腰をぐっと抱き寄せてくれる逞しい腕に、安心する。
自分の全てを委ねることの出来る、唯一の場所。
ずっと、ずっと昔――。
ヴィヴィはその場所は自分だけの特別な場所だと、信じて疑っていなかった。
けれど、もうすぐ16歳になろうという今の自分には、それが過ちであることが分かっている。
(好き……大好き……私の『お兄ちゃん』……)
きっと、自分は死ぬまでこの人を愛し続ける。
どれだけ周りに後ろ指を指されようと、糾弾されようと。
その気持ちはもう誰にもコントロール出来ない。
自分でも、そして匠海でさえも。
だから離れなければならない。
自分が、愛しい匠海を、そして自分自身を穢し壊してしまう前に――。
何分ほど抱きしめあっていたのだろう。
ずっと続いていた沈黙を破ったのは、匠海だった。
「……っていうか、まだ、デート終わってないんだけど?」
「え……?」
胸の中でくぐもった返事を返したヴィヴィを、匠海は腕を緩めて覗き込んでくる。
「ここから見える夕日――。これを二人で見たら、俺の『デート』は終了です」
「あ……そっか、ごめんね。ヴィヴィ、勝手に終わらせちゃった」
ヴィヴィがそう言って匠海から体を離すと、匠海も腕を離した。
その匠海の腕がとても名残惜しそうに見えたのは、きっとヴィヴィの希望的観測に違いない。
二人はどうせなら外で見ようと、ウッドデッキのファイヤーベースで焚き火を起こし、夕暮れを待つことにした。
先に外のソファーに腰かけていたヴィヴィに、匠海がブランケットを持ってきて掛けてくれた。匠海の服が乾いたらしく、もう黒のバスローブから着替えていた。
「日の入りは18:18だって」
匠海のその声に腕時計を見ると、17:30だった。
「日……長くなったね」
ぽつりと呟いたヴィヴィは、瞳を細めて真っ赤に染まる水平線と手前の海面を見つめる。
「ヴィヴィに、言わなければならないことがある――」
「…………?」