この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第39章        

「ヴィヴィ……?」

 大きな灰色の瞳から更に新しい涙が零れ落ちる。その頬を濡らす冷たい涙を、匠海は指の腹で拭い、灰色の瞳を覗き込んでくる。

 あまりに真っ直ぐな瞳――紛れもなく『妹』であるヴィヴィを心配した眼差しだった。

 ヴィヴィは咄嗟に視線を逸らすと、締め付けられるように苦しい喉から必死に声を振り絞った。

「あ、あは……ごめんね」

 泣き笑いの表情から発されたのは、この場には場違いなほど明るい声だった。

「あ、あの……今日で『お兄ちゃん子』卒業して、明日からもうこんなに一緒にいること、できないんだって思うと、ちょっと寂しくなっちゃって……ただ、それだけなの!」

「ヴィヴィ……」

 ヴィヴィは匠海の両手に自分の手を添えると、ギュッと握りしめた。

「ごめんね。顔、洗ってくる……」

 そう言って腰を上げたヴィヴィを匠海が呼び止める。

「ヴィヴィ」

「……――っ」

 気が付くと、ヴィヴィのむき出しの両膝はウッドデッキに着いていた。そして何故か、上半身は匠海の広い胸の中に抱きしめられている。

(お兄、ちゃん……?)

「卒業なんか、しなくていい……」

(え……?)

 ヴィヴィは匠海の発言の意味が分からず、心の中で戸惑いの声を上げる。

「ヴィヴィはまだ、高校2年生だろ……。まだ、俺のことだけ見ていたらいい」

「お、兄ちゃん……?」

 ヴィヴィは匠海の言葉にびくりと震え、咄嗟に目の前の匠海の胸を押し返した。けれど匠海はさらにヴィヴィを抱き込んでくる。

「一年なんて、あっという間だ。すぐに帰ってくる――」

「…………」

(やめて……やめて……)

 胸の中でふるふると頭を振るヴィヴィ。

「俺は、嫌だ……」

「……――っ」

 ぎくりとヴィヴィの肩が震える。

「俺はまだ……、ヴィヴィから卒業できそうも、ない……」

 ヴィヴィの瞳から涙が溢れ出す。

(どうして……どうして、そんなことを言うの……?)

「駄目……だよ……」

(いっぱい考えたの。2年も掛けて必死に考えたの……なのに……っ)

 ヴィヴィは嗚咽を殺しながら、頭と心の両方で匠海を拒絶しようとする。

「どうしてだ……?」

 しかしヴィヴィの心など知りもしない匠海から、無慈悲な問いかけが降ってくる。

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ