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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第40章
デートから篠宮邸に戻った二人は、最低限の就寝の挨拶を交わしてそれぞれの部屋へと戻った。
ヴィヴィは出迎えてくれた朝比奈に「疲れたからもう寝るね」と断って、寝室へと籠った。
寝室に足を踏み入れた途端、ヴィヴィの足からは力が抜け、絨毯敷きのソファーにくたりと座り込んだ。
「………………」
泣きすぎて頭がぼうとする。
結局自分の気持ちをあんな形で告白してしまったヴィヴィは、その後、良心の呵責に苛まれて涙が止まらなかった。
告白された当人の匠海も最初は、
『な、に……言って……』
と引き攣った表情を浮かべ黙り込んでいたが、あまりにもヴィヴィが泣き続けるため、結局それ以上追及することも出来なかったのだろう。車で帰宅する最中もずっと慰めてくれていた。
(本当に……何やってるんだろう、私……)
匠海と距離を置くために敢えて、最後に『デート』を強請ったのに。
ちゃんと笑って「お兄ちゃん子を卒業する」と言えたのに。
どうして、こんな事になってしまったのか。
ヴィヴィはもう頭の中がごちゃごちゃ過ぎて、これ以上何も考えられなかった。
ただただ、楽しかった匠海との最初で最後の『デート』をこんな最悪な形でぶち壊してしまった自分に、ヴィヴィは心底嫌気がさした。
翌日。4月19日、日曜日。
どうやってベッドに潜り込んだのか全く記憶がないヴィヴィだが、何故かベッドの中で目を覚ました。
「………………」
頭の中はぼうと霞みがかったままなのに、物心ついたころからスケート中心の生活をしてきた体は勝手に動く。
潮の匂いが残っていた体をシャワーで清めると、スポーツウェアに身を包み、リンクへと向かった。
一般営業の開始時間まで滑り込んだ双子は、入念にストレッチを行うと一旦篠宮邸へと戻る。
「ヴィヴィ……」
隣の後部座席でジャンプの動画を確認していたクリスが、ふとヴィヴィに声を掛けてきた。
「なあに?」
「デート……どうだった?」
同じく動画を確認していたヴィヴィの瞳が、ぴくりと震える。
「楽しかった、よ」
「そっか……」
双子が静かに会話をしていると、車が篠宮邸に到着した。
「旦那様がご朝食をお待ちになっておられます」
朝比奈にそう言われ、双子は手早く着替えて父と朝食を取った。