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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第40章
「え……?」
「言っていいよ……そう思って、当然だもの」
「ヴィヴィ……」
「血の繋がった兄を、異性として見ている、だなんて……」
ヴィヴィのその言葉に、匠海がびくりと体を震わせたのが分かった。
バスローブの上で握りしめていたヴィヴィの細い指が、力を入れすぎて先端が白くなる。
それでも真っ直ぐ見つめ続けていたヴィヴィだったが、匠海のほうから苦しそうに視線を外した。
ヴィヴィは匠海の組まれた指先に視線を落とし、とつとつと語り始めた。
「自分の気持ちに気づいたのは、二年程前……」
「初めは、実のお兄ちゃんを好きになってしまった自分が……汚く、思えて……自分のこと、大嫌いになった……」
「……だから、俺を避けていたのか……?」
匠海がヴィヴィに視線を戻し、静かな声で問いかけてくる。
「うん……本当は、兄離れをしたなんて、嘘……。離れれば、何とかなるって……そう、思ってた……」
けれど、そんなことで終わらせられる想いじゃなかった。
「忘れようと、思ったの……こんな『想い』……誰も幸せにしない……誰にも、解ってもらえない……っ」
ヴィヴィは歯を噛みしめる。そうでもしないと、昨日の様に涙が溢れてしまいそうだった。
「ヴィヴィ……」
匠海のその声には、やるせなさや後悔の念といったものが滲み出ていた。足の上で組まれていた長い指が解かれ、スラックスの上で両拳がギュッと握られる。
匠海の膝に置かれた片手を、ヴィヴィは両手で包み持ち上げる。
暖かくて表層は柔らかいのに、骨ばっていて、少し重みのある匠海の掌。
「でも……幸せだった……お兄ちゃんを見つめているだけで、この大きな掌でたまに撫でてもらえるだけで、本当に幸せ、だったの……」
ヴィヴィは匠海の掌に自分の頬を寄せると、まるでその暖かさを噛みしめるようにそっと瞼を瞑る。
「だけど……それだけでは、どんどん満足できなくなってきて……」
ヴィヴィの小さな顔がくしゃりと歪む。
「お兄ちゃんがヴィヴィに優しくしてくれるたびに、どんどん欲深くなっていって……お兄ちゃんがヴィヴィを見てくれるたびに、触れたくなった……」
ゆっくりと瞼を開いたヴィヴィは、匠海の灰色の瞳をひたと見つめる。