この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第40章
しかし指先が匠海の首に届く瞬間、兄の口からは紛れもない拒絶の言葉が発せられた。
「本当に、どうかしていた……もう、俺に構うな……」
その匠海の言葉に、徐々にヴィヴィの瞳が大きく見開かれる。
(どう……して……)
「………………っ」
(どうして――っ!?
さっきまでヴィヴィのこと、触っていたじゃない?
ヴィヴィの大事なところを、その指が出入りしていたじゃないっ!
なのに――っ)
「どうして――っ!?」
気が付くとヴィヴィは絶叫していた。
説明の出来ない怒りが爆発し、白いバスローブを羽織っただけの華奢な身体がぶるぶると痙攣する。
自分には怒る権利さえないと分かっているのに、気持ちが乱れてコントロール出来ず、想いが全て口から漏れ出てしまう。
ヴィヴィのあまりの取り乱しように、今度は匠海が目を見開いた。
「嫌っ! 好きなの! ずっとずっと、好きだったのっ!!」
「……頼む……やめてくれ……」
匠海が縋り付いてくるヴィヴィから視線を逸らす。
けれどもうヴィヴィは我慢できなかった。
「好き……好き……こんなにも、好きなのに!
愛しているのにっ!!
どうして分かってくれないの――っ!!!」
「………………っ」
匠海が絶句してヴィヴィの剣幕を見返す。
「お兄ちゃんじゃないと駄目なのっ!
好きっ! 好き、大好き……っ! 好き……す――」
「ヴィヴィ……っ!」
好きだと連呼し続けるヴィヴィの口を、もう我慢できない匠海が大きな掌で覆う。
ヴィヴィは首を振って懸命にそれを振りほどこうとしたが、匠海の力に叶うわけがなかった。
脱力したヴィヴィは、ぺたりとソファーに尻をつく。
(好き……なのに――)
ヴィヴィの大きな瞳から涙が盛り上がり、とうとう溢れ出す。
それは頬を伝うと、ヴィヴィの口を覆った匠海の掌を濡らし、滴り落ちていく。
ぱたぱたと冷たい涙が音を立て、ヴィヴィの細い太ももへと降り注ぐ。
「ヴィヴィ……頼む……許してくれ……」
そう苦しそうに贖罪の言葉を口にした匠海の表情は、涙で霞んだヴィヴィの瞳では捉えることができなかった。
(お兄ちゃん……どうして――)