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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第41章
「あ……そうでしたか。でも、珍しがられませんか? 若い男性でフィギュア好きって」
ヴィヴィは納得しながらも、そう疑問をぶつけてみる。貰うファンレターも、試合やアイスショーの観客も大半が女性ファンからだ、しかも年配の。
「確かにね。でも僕はフィギュアの他にもバレエやオペラも好きなんだ。つまり総合的に美しいものが好き、かな」
「へえ。実際に劇場に観に行かれるんですか?」
周りの同年代にはあまりいない趣味の真行寺に単純に興味が湧いたヴィヴィは、再度尋ねる。
「行くよ。やっぱりライブが一番だからね。あとは音楽も好きで、実はN響(NHK交響楽団)の定期会員だったりもする」
少し照れたようにそう返してくる真行寺に、
「N饗!? いいですね。羨ましい~」
ヴィヴィはそう言って唇の前で両手を合わせて驚いた。そんな良い反応を示したヴィヴィに、
「定期会員だと、毎回同じ席で鑑賞できたりするんだ」
と真行寺がアドバイスをしてくれて、二人の会話に花が咲く。
「一緒に演奏会に行ってみれば?」
話が弾む二人を見守っていた匠海が、斜め向かいの席から二人に提案してくる。
(え……?)
ヴィヴィは咄嗟に匠海に視線を移す。優しく細められた灰色の瞳は二人を交合に見つめている。
「え? そりゃ、僕は嬉しいですけれど……ヴィクトリアちゃんには、ご迷惑ですよ」
驚いた様子の真行寺が、匠海に向かってそう謙遜する。
「兄である俺から頼むよ。うちの妹ってほんと『お子ちゃま』でさ。高校2年になったのにも関わらず、男っ気ひとつもないんだ」
呆れたように苦笑した匠海は、真行寺にヴィヴィとのデートを設定させようとする。
「………………」
(……そういう、こと……)
スカートの上に置いていたヴィヴィの指の付け根が、ぎゅうと痺れた。
震え始めそうになる両手を咄嗟に握りしめる。
「ど、どうする?」
少し困ったように、けれど満更でもない表情で隣のヴィヴィを見つめてくる真行寺に、ヴィヴィは頷く。
「真行寺さんがご迷惑でなければ……宜しくお願いします」
ヴィヴィが声は小さいけれど、きっぱりとそう返事を返した。
「僕は勿論嬉しいよ。じゃあ、いつにしようか?」