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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第41章
ぱたたと、ノートにヴィヴィから零れた涙が降り注ぐ。
(これが、答え……)
ヴィヴィはぐっと薄い唇を噛むと、嗚咽が漏れそうになるのを必死で堪える。リビングには朝比奈が控えているらしく、たまに物音が聞こえていた。
「………………っ」
問題を解こうとするのに、震える指はミミズののたうつような意味不明の記号しか描き出してくれない。
やがてそれさえも、溢れつづける涙に霞んで視界から消えた。
(これが、ヴィヴィの気持ちに対する、お兄ちゃんの『答え』なんだ……)
ヴィヴィは顔の前で震える両手を握りしめると、ギュッと瞼を閉じた。
4月22日(水)。
BSTの創立記念日で休みのヴィヴィは、クリスと午前中みっちりとスケートのレッスンを受けた。
篠宮邸へと帰る車の中で、クリスがヴィヴィの細い肩にこつんと金色の頭を乗せてきた。
「疲れちゃった?」
ヴィヴィが細い指でクリスの髪を梳きながら尋ねる。
「ヴィヴィ……約束の『デート』……今から、行く……?」
「あ……ごめん。今日は16時から用事があるんだ」
「16時……? 夜のレッスンは?」
「お兄ちゃんがマムに、お休みする了解を得てるって……」
「兄さんが……? 何で……?」
意外そうに聞き返してくるクリスに、ヴィヴィは言葉を濁す。
「うん……ちょっとね……」
「ふうん……」
理由を言わないヴィヴィに、少し不服そうにクリスが相槌を返す。
「まさか……また兄さんと『デート』……?」
クリスのその言葉に、ヴィヴィの薄い胸の内がちくりと痛みを感じる。
「違うよ……」
「駄目だよ……まだ僕と『デート』……してないんだから」
そう言って少し頬を膨らませたクリスを見下ろし、ヴィヴィは苦笑する。
「GW空けに、しようか?」
「うん……どこか行きたいところ、ある……?」
「あ~……人の少ないところがいいな……」
「どうして……?」
ヴィヴィの提案に、クリスが不思議そうに返してくる。
「この前、人に囲まれて、ちょっと大変だったの。たぶん、クリスと一緒だったらもっと目立っちゃうだろうし」
「サングラスすれば……?」
クリスの指摘にヴィヴィが両手をポンと叩く。