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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第41章      

「知らない? 匠海さんって毎日のように周りの男共から『妹ちゃん、紹介して!』って言われてるのに、絶対誰にも紹介しないって有名なんだよ」

 真行寺はそう言って、くすりと笑う。

「………………」

「だから裏では結構『シスコンかも?』って噂されてる」

「そう、だったんですか……」

 ヴィヴィは驚きで瞳を瞬かせながら、小さな声で相槌を打った。

「ま、兄妹喧嘩くらいするよね。うちも妹いるから、分かるよ」

「喧嘩……するんですか?」

「殆どしたことない」

「え~!?」

(さっき言ってたことと、違いますが?)

 ヴィヴィは心の中で突っ込みながら、眉をハの字にして困ったように笑う。

「僕が心優しいお兄ちゃんだから、どれだけ我儘な妹でも、苛めたり泣かせたり出来ないって訳」

「ふふ。なんか、うちと似ていますね」

「そうだね。だからヴィクトリアちゃん、安心していいよ」

「え?」

 ヴィヴィは真行寺の言葉の意味が分からず、運転席の彼を振り返った。

「僕の妹、ヴィクトリアちゃんと同い年なんだ。だから、君のことを見ていると妹を思い出して――手が出せない」

「………………」

 ヴィヴィは驚いて、目をぱちくりと瞬く。

「だから、今日は『デート』と言いながらも、ただの『お出掛け』。僕の事をお兄ちゃんだと思って、リラックスして楽しんでくれたら嬉しいよ」

 ミラー越しにそう言って笑いかけてくれる真行寺に、ヴィヴィは無意識に強張っていた肩の力がすっと抜けた気がした。

(お兄ちゃんが、沢山いる男の人の中からこの人を選んだ理由、分かる気がする……)

「じゃあ……『お兄ちゃん』って、呼びますか?」

 悪戯っぽく笑ってそう聞き返すと、

「そ、それはうちの鬼妹を思い出すから、やめて……」

と真行寺が目を白黒させて嫌がり、ヴィヴィは心の底から笑った。

 目的の水族館に着くと、ヴィヴィはほっと胸を撫で下ろした。

 水族館という選択は正しかった。館内は水槽展示が映えるように照明が落とされ、自分達以外の人間に意識をやる人も少なそうだった。

「水族館はよく来るの?」

「えっと、確か初等部6年生以降、来たことないです。でも、ずっと行きたいなと思っていて」

 真行寺の質問に、ヴィヴィは正直に答える。

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