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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第41章
「あ、あそこなんて、どうですか?」
ヴィヴィは進行方向にあった『和食レストラン』という看板の店を指さす。
「え……あれ、ファミレス居酒屋だけど、いいの?」
「ファミレス!? 入ったことないので、行ってみたいです!」
ヴィヴィが瞳を輝かせて身を乗り出す。真行寺にはそんなヴィヴィの反応が新鮮に映るらしく、笑いながらファミレスの駐車場へと車を停めた。
個室の部屋が連なる一室に通されたヴィヴィは、吟味してメニューを注文した。
ヴィヴィがサバの味噌煮定食を、真行寺が生姜焼き定食を頼みそれぞれが配膳された。
胸の前で手を合わせて「頂きます」と言って嬉しそうにサバに箸を付けたヴィヴィだったが、何故か向かいの真行寺が食べ始めていないことに気づき、顔を上げる。
「どうしました?」
「いや……ヴィヴィちゃんって、西洋人形のように可愛いから……クロワッサンとか、パスタとか、マカロンとか……そういうものを食べてるイメージがあって……」
真行寺の言葉に、ヴィヴィは金色の頭をこてと傾げる。
「幻滅させました?」
「ま、まさか」
焦ったように否定する真行寺にヴィヴィは微笑む。
「和食が一番好きですよ。ずっと日本で育ちましたし、カロリーコントロールもしやすいですし」
「そっか、トップアスリートだもんね」
その後「実は聞きたくてうずうずしてたんだけど……」と真行寺が切り出し、フィギュアスケートやバレエの情報、振付師や音楽の選別方法等、ヴィヴィは食事をしながら聞かれたことを丁寧に説明した。
お会計を済まして車に戻ると、真行寺はナビを操作しながら、
「そろそろ、送るよ」
と言ってきた。
「え……?」
驚いた声を上げたヴィヴィに、振り返った真行寺が微笑む。
「まだ遊びたりなかった? でも遅くなると、匠海さんもご家族も心配されるよ?」
華奢な腕に巻かれた時計に視線を落とすと、時間は20時を指していた。
「……これって、デートですよね?」
俯いたままのヴィヴィが、そう確認するように呟く
「一応、そうだね」
困ったように笑う真行寺の声が車内に落ちる。
「抱かないんですか?」
「…………え?」
俯いたままだったヴィヴィがすっと顔を上げ、隣の真行寺にひたと真正面から視線を合わせる。