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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第41章
桃色の唇からもう一度同じ言葉が零れる。
「私とセックスしないんですか?」
「えっ!? ちょっと、まっ……な、に……?」
余程ヴィヴィの発言に驚いたのか、真行寺は何故か運転席側の扉へとばっと飛び退いた。
「デートの最後はするんじゃないんですか――セックス?」
ヴィヴィは真顔で真行寺を見上げて、なおも言い募る。
「ヴィクトリア、ちゃん……?」
信じられない様に瞳を見開いた真行寺が、ヴィヴィに視線を合わしながらおずおずと運転席に座り直す。
「………………」
ヴィヴィはワンピースの上に置いていた細い手を持ち上げ、サイドギアに置かれていた真行寺の掌に自分のそれを重ね合わせた。
細い人差し指の腹が、真行寺の薬指付け根の骨の上を、つうと辿る。
途端、真行寺の体がびくりと震えた。
見下ろしてくる瞳は小刻みに揺れていたが、やがて反対の手でヴィヴィの掌をぎゅっと握りしめてきた。
それを了承と取ったヴィヴィが、サイドギアから手をよける。
真行寺は硬い表情でエンジンを掛けると、ハンドルを握って車を発進させた。
車はすでに夜の帳が降りた車道を滑っていく。
ヴィヴィは助手席の窓に視線を移す。
時折街頭の光が反射して、自分の顔が映り込む。
ヴィヴィの灰色の瞳が、昏く濁って映って見えた。
「………………」
(お兄ちゃんに見向きもされないこんな躰……
もう、どうなってしまってもいい……)
ヴィヴィはまっすぐと進行方向を見つめると、その手の中でスマートフォンの電源をオフにした。