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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第42章
4月23日(木)。
真行寺とのデートの翌朝、ヴィヴィは4時に目が覚めてしまった。
(私……モンガラカワハギになって、ずっと同じところ、泳いで回ってた……)
ヴィヴィは先程までみていた風変わりな夢の内容を、ぼうと天井を見上げながら思い返す。
むくりと起き上がると、両腕を上げてう~んと伸びをする。
その華奢な躰には、薄いキャミソールとショーツを身に纏っただけ。
ポスリと軽い音を立ててスプリングに腕を下すと、その指の先の、穏やかな真行寺の寝顔が目に入る。
ヴィヴィは指先で真行寺の黒い髪を触ってみる。
昨日必死に縋り付いてしまった、匠海とは違った、少し猫っ毛のそれ。
(気持ち、いい……でも……違う……)
しばらくして真行寺の瞼がゆっくりと開いた。
「早起き、だね……」
寝起きの掠れた声でそう呟いた真行寺は、ごろんと横になるとヴィヴィを眩しそうに見上げる。
「いつも……朝練しているから……」
「そっか」
体を起こした真行寺から上掛けが滑り落ち、何も身に着けていない上半身が露わになる。ヴィヴィはとっさに恥ずかしさを覚え、さっと目を背けた。そんなヴィヴィに真行寺がくすりと笑う。
「送っていくよ。シャワー使う?」
「はい……」
シャワーを浴びて手早く準備したヴィヴィは、そのまま真行寺の車で篠宮邸の近くまで送ってもらった。
裏門には事前に電話をしておいた朝比奈が、困惑顔で立っていた。
その表情はいつもお小言を言う時の顔だったが、ぐっと堪えているようで口から出てきたのは違う言葉だった。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ただいま……」
朝比奈に連れられて勝手口から屋敷内へと入る。
三階の私室に入り扉を閉めると、ウォーキングクローゼットに向かうヴィヴィを朝比奈が引き留めた。
「お嬢様、いったいこんな時間までどこへ――」
しかしその追及は、扉の開く音で強制的に中断された。
音がした扉のほうをヴィヴィは振り返らなかった。そのまま広いクローゼットに入り、朝連へと向かうための準備を始める。
絨毯張りの床をほとんど音を立てずに離れていく朝比奈の様子は、振り返らなくても気配から伺えた。