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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第42章
ヴィヴィは着ていたワンピースの背中のファスナーを下ろし、両腕を抜いて脱ぎ捨てた。
パサリと静かな音を立ててワンピースが床に落ちる。
その途端、キャミソールとショーツだけになったヴィヴィの抜けるような白い肌が外気に晒される。
棚からストレッチパンツを取出し身に着けると、黒いトップスに手を伸ばす。
しかしその腕は、匠海によって掴まれてしまった。
「…………何?」
ヴィヴィは振り向かず、嘆息とともに短い言葉を吐き出す。
「今まで……どこにいた?」
苛立ちを何とか押し殺したような、匠海の声。
「…………何故?」
そのヴィヴィの返事に、匠海の苛立ちが爆発した。掴まれた腕が痛いくらい握りしめられる。
「俺はお前の家族だ。まだ十五歳の妹が連絡もなしに朝帰りしたのを、心配するのは当然だろうっ!」
「……家族……?」
「そうだ。ヴィヴィは、俺の妹だろう」
その正論に、ヴィヴィの口からまた溜め息が漏れる。
「……まだ、家族って言ってくれる……?」
「え……?」
匠海が怪訝そうに打った相槌に、ヴィヴィはやっと振り向き、背の高い匠海の瞳を見据えた。
「好きでもない男の人に、簡単に躰を許すような女でも……妹って言ってくれる――?」
匠海がひゅっと息を吸い込んだ音が、静かなクローゼットに響く。
「……冗談、言うな……」
ぼそりとそう呟いた匠海が、ヴィヴィの腕をゆっくりと離した。
拘束を解かれたヴィヴィが匠海に背を向け頭からトップスを被り、さらりと音を立てて長い髪を襟から出した。
「あいつは――真行寺は、そんなことをする奴じゃない。どうせ……あらかたヴィヴィが我儘を言って、こんな時間まで振り回していたんだろう?」
ヴィヴィの言うことを信じられないのか信じたくないのか、狼狽えた様な声で匠海は妹の背に向かって尋ねる。
ヴィヴィは目の前のオットマンに置かれたスケート靴とバックを片手で掴んだ。
そしてくるりと匠海のほうを振り返ると、すっと顔を上げて真正面から視線を合わせた。
「ヴィヴィが誘ったの」
「………………」
ヴィヴィのその告白に、匠海の灰色の瞳が一瞬震えたのをヴィヴィは見逃さなかった。
更なる真実を匠海にぶつける。