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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第42章
朝比奈はクリスを呼びに出て行ったが、この時間ならまだ匠海も出勤前でいる筈だ。
ヴィヴィに激甘の匠海のことだ、普段ならクリス共々すぐに心配して来てくれそうだが。
そう思っていると寝室の扉が開き、クリスが入ってきた。小走りにベッドサイドに近づくと心配そうな表情で「大丈夫?」と聞いてくる。
「全然、大丈夫だよ。ねえ、クリス。お兄ちゃんは? もう会社に行っちゃったの?」
少し拗ねたように唇を尖らせるヴィヴィに、クリスと朝比奈がはっと互いの顔を見合わせる。
「お嬢様。匠海様は急用がお出来になり、会社へ向かわれました」
朝比奈がクリスの隣で恭しくそう答える。
「そっか、お仕事じゃしょうがないね。それより、ヴィヴィ。なんで怪我してるの?」
ヴィヴィは不思議そうに包帯が巻かれた左腕を見つめる。
「それよりヴィヴィ、喉乾かない? オレンジジュースでも飲む?」
何故か話題を変えたクリスにヴィヴィは違和感を覚えたが、すぐに自分の喉がカラカラだということに気付く。
「飲む。っていうか、起きる~」
「え? 大丈夫?」
「うん。左腕以外はどこも痛くないし」
「じゃあ、ゆっくりね」
クリスが心配そうに手を貸して、ヴィヴィを立たせてくれる。
「大丈夫だよ。それよりクリスも、そろそろ学校に行く準備しなきゃ。ヴィヴィ、今日ディベートの進行役だったよね~」
リビングのソファーセットに用意されていたジュースのグラスを持ち上げながら、ヴィヴィは立ったままクリスに視線を移す。
「ヴィヴィは、駄目……。お願いだから、今日は家で、ゆっくりしてて……」
心底困ったようにそう言い募るクリスに、ヴィヴィは心の中で「これくらいの怪我で大げさだなあ」と思う。
「え~なんで? めちゃくちゃ元気なのに? さ。準備しよう」
ヴィヴィはそう言うと、オレンジジュースをストローで勢いよく飲み干してグラスを置き、ウォーキングクローゼットへと向かった。
中に入り纏っていたトップスに手を掛ける。
(あれ……なんで、ナイトウェアじゃないんだろう……?)