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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第43章           

「匠海は『お兄ちゃん』だからね。か弱い妹を、身を挺して守るのは当然よ!」

 そう揺るぎない強さで言い切るジュリアンに、ヴィヴィは、

「ヴィヴィ、か弱い……?」

と首を傾げたが、

「全然。どちらかというと、強いわ」

とジュリアンは自信満々で言い切った。その表情に、ヴィヴィがくすりと苦笑する。

「ふ。元気そうで良かったわ。ヴィヴィ――」

「……うん?」

「匠海には勿論だけれど、クリスにも謝っておきなさいね。あの子、物凄く心配していたわよ」

 ジュリアンのその助言に、ヴィヴィは素直に頷く。

「うん……分かってる」

 匠海とヴィヴィが階段から落ちた時も、その後も、狂ったように泣き叫んでばかりいた自分を、クリスはずっと抱きしめて宥めてくれていた。

 心優しいクリスのことだ。きっと自分の事の様に心配してくれた事は、想像に難くない。

「明日から、クリスと一緒に、リンクに行くね」

 ヴィヴィがそう言うと、ジュリアンはにこりと微笑んで「待ってるわ」と言って寝室を後にした。

「………………」

 一人になった寝室で、ヴィヴィは小さく息を吐き出す。

(あれ……そういえば朝帰りのこと、何も言われなかった……?)

 ヴィヴィはふと疑問に思う。それに何故ヴィヴィが階段から落ちることになったのか、ジュリアンは何も聞いてこなかった。

 不思議に思っていると、朝比奈が寝室に入ってきた。

「朝比奈は……ダッド達に私の『朝帰り』、報告してないの?」

 ヴィヴィの突然の問いかけに、朝比奈は一瞬止まったが「ええ」と返事をして主の傍に寄ってきた。

「どうして……?」

 朝比奈は双子の執事 兼 守り役 兼 監視役だ。日付が変わっても戻らない主について、雇い主である双子の両親に報告する義務がある筈だが――。

「匠海様が『今回の件は自分の責任なので妹が叱責される事の無い様、両親に報告はしないでくれ』と仰られました」

「そう…………」

 匠海が手を回してくれていた事実を知り、ヴィヴィの表情が何とも言えないものになる。それは朝比奈も同じだったようで、当惑の表情を浮かべながら口を開いた。

「お嬢様……昨夜は、真行寺様と一緒にいらっしゃったのですね?」

「うん……。ごめんなさい……」

 ヴィヴィは嘘を付くつもりもなく、正直に答えて謝罪した。

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