この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第43章
「匠海は『お兄ちゃん』だからね。か弱い妹を、身を挺して守るのは当然よ!」
そう揺るぎない強さで言い切るジュリアンに、ヴィヴィは、
「ヴィヴィ、か弱い……?」
と首を傾げたが、
「全然。どちらかというと、強いわ」
とジュリアンは自信満々で言い切った。その表情に、ヴィヴィがくすりと苦笑する。
「ふ。元気そうで良かったわ。ヴィヴィ――」
「……うん?」
「匠海には勿論だけれど、クリスにも謝っておきなさいね。あの子、物凄く心配していたわよ」
ジュリアンのその助言に、ヴィヴィは素直に頷く。
「うん……分かってる」
匠海とヴィヴィが階段から落ちた時も、その後も、狂ったように泣き叫んでばかりいた自分を、クリスはずっと抱きしめて宥めてくれていた。
心優しいクリスのことだ。きっと自分の事の様に心配してくれた事は、想像に難くない。
「明日から、クリスと一緒に、リンクに行くね」
ヴィヴィがそう言うと、ジュリアンはにこりと微笑んで「待ってるわ」と言って寝室を後にした。
「………………」
一人になった寝室で、ヴィヴィは小さく息を吐き出す。
(あれ……そういえば朝帰りのこと、何も言われなかった……?)
ヴィヴィはふと疑問に思う。それに何故ヴィヴィが階段から落ちることになったのか、ジュリアンは何も聞いてこなかった。
不思議に思っていると、朝比奈が寝室に入ってきた。
「朝比奈は……ダッド達に私の『朝帰り』、報告してないの?」
ヴィヴィの突然の問いかけに、朝比奈は一瞬止まったが「ええ」と返事をして主の傍に寄ってきた。
「どうして……?」
朝比奈は双子の執事 兼 守り役 兼 監視役だ。日付が変わっても戻らない主について、雇い主である双子の両親に報告する義務がある筈だが――。
「匠海様が『今回の件は自分の責任なので妹が叱責される事の無い様、両親に報告はしないでくれ』と仰られました」
「そう…………」
匠海が手を回してくれていた事実を知り、ヴィヴィの表情が何とも言えないものになる。それは朝比奈も同じだったようで、当惑の表情を浮かべながら口を開いた。
「お嬢様……昨夜は、真行寺様と一緒にいらっしゃったのですね?」
「うん……。ごめんなさい……」
ヴィヴィは嘘を付くつもりもなく、正直に答えて謝罪した。