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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第43章
「うん……お兄ちゃんが、お兄ちゃんが、庇ってくれたから――っ」
ヴィヴィは苦しそうにそう言うと、深々と頭を下げた。
「ごめんなさいっ、本当にごめんなさい! ……謝って済むなんて、思っていないけれど、謝ることしかできないから――」
泣き出す一歩手前のような声でそう必死に謝り続けるヴィヴィに、匠海は苦笑する。
「ヴィヴィを庇ったことに対しては、お前が謝る必要はない。俺が勝手にやったことだ」
「そんな……!」
匠海の信じられない言葉に、ヴィヴィは頭を上げて反論しようとする。
「階段で言い争うなんて、本当に馬鹿なことをした……。そりゃあ、落ちて当たり前だ」
自分に呆れたようにそう言う匠海の言葉を、ヴィヴィは首を振って打ち消す。
「……ヴィヴィが、お兄ちゃんの言うことを聞かず、部屋から逃げ出したから……」
「ヴィヴィ……もういいから……」
匠海は自分を責め続けるヴィヴィに、当惑したように呟く。しかしヴィヴィははっと気づき、口を開いた。
「お兄ちゃん、打撲で動き辛いんでしょう? 何か、ヴィヴィに出来ることない?」
仕事の口述筆記だって出来るし、身の回りの世話だって出来るよ、と提案してくるヴィヴィに、匠海は小さく首を振る。
その顔がとても思い詰めたような表情で、ヴィヴィの心はさざ波のように小さく揺らぎ出す。
「お兄、ちゃん……?」
「……俺のことを、ただの『兄』として、見てくれ……」
「え…………?」
匠海のただ一つの願いに、ヴィヴィは細い声を上げる。
「もしそれが出来ないのであれば、俺の事……俺の存在自体を、忘れてくれ……」
次いで告げられた願いに、ヴィヴィはふるふると首を振る。
「いや、いやっ……それだけは、出来ない――」
青ざめたヴィヴィは、そう弱々しく呟きながら、首を振り続ける。
さらさらと金髪が揺れる音が、寝室に落ちる。
「ヴィヴィ……頼む……」
匠海が感情を押し殺すように、ぐっと瞼を瞑ってヴィヴィに食い下がる。
「好きなの……愛しているの……お兄ちゃん以外なんて、考えられない」
「俺は、ヴィヴィのこと、妹以上に、見れないよ……」