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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第43章
「どう、して……? だって、あの時は――」
(ヴィヴィの、大事なところに触れて――)
「ヴィヴィ……っ!!」
匠海の鋭い声に、ヴィヴィはびくりと震え上がる。
息苦しい沈黙が下りる中、弱々しく口を開いたのはヴィヴィだった。
「……見ようと、して、くれないからだよ……ヴィヴィの、こと、女として……」
「無理、言うな……俺は、お前とクリスが天使の様に可愛かった赤ん坊のころから、知ってるんだぞ? 女としてなんて、見れるわけないじゃないか……」
「お兄ちゃん……お願いっ」
ヴィヴィは制服のスカートを両手でぎゅっと握りしめ、必死に匠海に懇願する。
「頼むヴィヴィ……。お前の望むことなら何だって叶えてやる。何だって与えてやる。けれど……これだけはどうしても、無理なんだ――」
苦しそうにそうヴィヴィを諭す匠海だが、ヴィヴィは聞く耳を持たなかった。
「お兄ちゃんしか欲しくないの! お兄ちゃんの傍にいることが、ヴィヴィの望みなの!」
『どうして分かってくれないの――!?』
どれだけ匠海が言葉を重ねても、ヴィヴィの心の中にはその言葉がぐるぐると渦を巻いて、どんどんと膨れ上がっていくだけだった。
「ヴィヴィ、愛している……。
心から愛している――。
けれど、それは『妹』としてだ……」
匠海がまっすぐにヴィヴィを見上げ、はっきりとそう言い放った。
「……――っ」
絶句して大きな瞳を見開いたヴィヴィから、匠海が辛そうに視線を逸らす。
「もう、出て行きなさい……。一週間位で痛みが引くだろうから、そうしたら俺はすぐに渡英する。それだけ距離が離れたらヴィヴィも目が覚めるはずだ……。兄に恋するなんて、どれだけ不毛な事なのか……」
ヴィヴィの灰色の瞳から、とうとう大粒の涙が零れ落ちる。
「…………いや、いやぁっ!」
もうそれ以上の言葉は、ヴィヴィの中から出てこなかった。
「出て行けっ!」
そう怒鳴って背を向けた匠海に、ヴィヴィはびくりと体を戦慄かせ、やがて泣きながら寝室から飛び出していった。