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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第7章
何かは分からないが、先程の朝比奈の発言を聞いた途端、ヴィヴィの心がもやもやと煙り始めた。
不可解に思い、朝比奈を見上げると「今、なんて言った?」と問い直す。
「死体と間違えました……、ですか?」
(やっぱり、そう思ってたのか――)
「ううん、その前――」
「匠海様のお部屋との扉の前で、倒れていらした……、でしょうか?」
反芻してみせた朝比奈を、見つめるヴィヴィの瞳が、徐々に落ち着きを失くしていく。
「…………あ、れ……?」
何か自分は、大切なことを忘れているような気がする。
手にしていたスプーンを皿に置き、過去の残像へと必死に手を伸ばす。
(ヴィヴィ……、何か……見た。なんだろう? 確か、お兄ちゃんの事なんだけど――)
もう少しで思い出せそうなのに、思い出せない。
そのモヤモヤが気持ち悪く。
水の入ったグラスに手を伸ばし、それを飲み下そうとした途端、
「げほ……っ! ごほごほっ!」
ヴィヴィは激しく咳き込んだ。
突然のことに朝比奈が驚き、ナプキンを手渡し、小さな背中を擦る。
(おっ 思い出した……っ ヴィヴィ――っ!!)
何を見たか、断片的に思い出してきたヴィヴィだったが、
最後に “匠海が麻美を自分のもので下から突き上げている映像” を思い浮かべ、また更にむせた。
(お、お兄ちゃんたら……『婚前交渉』、していたなんて――っ!!)
小さな顔が真っ赤に火照り、熱を持ち。
蒸気でも吹き出しそうな勢いを抑え込もうと、ひたすら両手で顔を覆う。
そんな主の様子を目にし、
「また熱が上がりましたかね?」
と、仕事熱心な執事は、心配そうに見守っていたのだった。