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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第43章           

 ヴィヴィの思考が正常でいられたのはそこまでだった。

 襲い来るのは猛烈な吐き気と、痙攣を起こして酸素を要求する身体。

 次第に遠くなる意識の中、ヴィヴィは匠海の声を聞いた。

「ヴィヴィ……どうして――っ」

 まるで匠海のほうが喉を絞められたような、苦しそうな掠れた声。

「………………っ」

(ああ、そんな泣きそうな声を出さないで……お兄ちゃんが悪いことなんて、一個もないんだから――)

 兄はいつも正しくて、正義感の強い人。

 曲がったことや自分を汚し貶める者を許せない、潔癖さを持つ人。

 分かってるから――。





(お兄ちゃん……愛してる……ずっと――)





 喉を拘束され声を発することなど無理と分かっているのに、ヴィヴィは最後に声にして伝えたくて、震える唇だけを動かし――そしてそこで意識は闇へと葬られた。
 












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