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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第44章
翌日。4月26日(日)。
丸一日、熱発して寝込んでいたヴィヴィは翌日の早朝、意識を取り戻した。
物凄く瞼が重く感じる。
身体も何故か重い。
まるで体表面が接している場所に、重い鎖で縫いとめられているかようだ。
それでも何とか瞼を上げると、起き抜けで霞む視界が、非常にゆっくりと焦点を結びだす。
瞼の奥の灰色の瞳に、照明が最小限まで落とされた、薄暗い自分の寝室の天井が目に入る
「………………」
(な……ん、で……)
ヴィヴィの指先が、ベッドのシーツを握りしめる。
爪が布を引っ掻くキュっという耳障りな音が、静かなそこに響く。
それに眉を潜めると、それだけで鈍痛が走った。
頭が割れるように痛い。
喉が渇き、粘膜が引き攣れる感じがする。
そしてその喉を通り乾燥した唇から漏れるのは、自分でも熱く感じる程、熱を帯びた呼気。
(どう、して……)
こうして横たわっているだけでもつぶさに感じ取る事が出来る、自分が生きているという証。
ヴィヴィは割れるような痛みを訴える頭の中、疑問に思う。
(確かに……あの時、お兄ちゃんは、私の首を、絞めた筈……。
そして、私は、あの後、意識を失って……)
急に喉が息苦しく感じ、ヴィヴィはごほごほと急き込んだ。
すると誰もいないと思っていた隣から、衣擦れの音と共に「大丈夫ですか?」という朝比奈の声が聞こえた。
激しく咳き込みながら朝比奈がいるほうに体を横たえると、大きな掌で優しく自分の背中をさすってくれる。
水を飲ませてもらってようやく落ち着いたヴィヴィは、朝比奈から昨日の朝からずっと熱発していたことを聞いた。
喉が痛くて手をそこに伸ばすと、なにか包帯のようなものが巻かれていた。
ヴィヴィの細い指先が、凍りついたかのように固まる。
「………………」
やはり、自分の記憶に間違いはない。
ヴィヴィは首に伸ばしていた指をぎゅっと握りしめた。
自分はあの日、兄である匠海を拘束し、強姦した。
そして自分はその被害者である兄の手によって、首を絞めて殺されたはず。なのに、
(なのに、どうして……私は、まだ、生きているんだろう――)