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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第45章
「何言ってんの。高等部2年でいまだにワンピ着てるのなんて、ヴィヴィだけなんだからね?」
カレンは呆れながらそう言うと、ヴィヴィが着ている紺地に赤ラインのタータンチェックワンピースの制服を見る。初等部や中等部では着る生徒が多かったワンピースも、高等部にもなると誰も着用せず、普通のスカートタイプに切り替えていた。
「楽でいいじゃん。ウエスト締め付けられないし」
不思議そうにお腹を撫でながらそう言うヴィヴィ。
「そういう発想が『お子ちゃま』なんだって」
近くにいたアレックスがそうからかってくるのを、ヴィヴィはじと目で睨みつけて人差し指を振りかざした。
「男子は最近、やたらとシャツのボタン開け過ぎ!」
「そうだよ~、貧弱な胸板、見せないで~!」
周りの女子も頬に両手を添え、調子に乗って騒ぎ出す。
「なにおう!? ホントは俺達の色気にやられそうだから、困ってんだろ?」
「ち、違うわよ! 胸毛でも生やしてから来やがれ、この『お子ちゃま』男子め!」
男子と女子が言い合っているのを、ヴィヴィとカレンは窓枠にもたれ「「平和だね~」」と見守っていた。
「っと、話が脇道ずれちゃった。じゃあ、私も黒いドレスにしよっかな~? ゴスロリとか?」
ケイトがそう言うと、他の生徒が、
「あ~! それいいね、いっそ仮装パーティーにしちゃえば?」
と乗ってきた。
「あ、じゃあ俺、狼男!」
「私、赤ずきんちゃんする!」
フランケンシュタイン! 死神! シスター!
と皆が口々に仮装ネタを言い合い、クラスルームがワイワイと騒がしくなる。
「あ……でも、『素敵★お兄様』はご迷惑かしら……?」
(『素敵★お兄様』……?)
ヴィヴィは何のことか分からずカレンの言葉に一瞬頭の中で首を傾げたが、すぐに匠海の事だと合点した。
「あ、えっと……お兄ちゃん、イギリスに留学しちゃって、今年は出席しないって」
「え゛~~、そうなの~!?」
「一年に一度、麗しいお姿を間近で拝見できる、貴重なチャンスだったのにぃ~!?」
「う、うん……ごめん」
数人の女子にそう言って詰め寄られ、ヴィヴィは謝りながら後ずさりした。