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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第45章
「だから……何やっても、いいと思うよ……」
隣からそう助け舟を出してくれたクリスに、全員が「それもそだね~」と納得し、結局5月1日(金)の双子の誕生日パーティーは仮装パーティーとなった。
その日の夜。
スケートリンクに立っていたヴィヴィからは、昼とは同一人物とは思えない、苛立ちを噛み殺したような声が漏れる。
「全然、クリーンに降りれない……っ」
正直、匠海とのデートに真行寺とのデート、その後のごたごたで、ヴィヴィはちょくちょくレッスンを休んでいた。
どうやらその付けが確実に回ってきたようで、三回転ジャンプが上手く飛べなくなっていた。ヴィヴィの代名詞である三回転アクセルに至っては、飛べる気配すらない。
ヴィヴィはアシスタントスタッフが撮ってくれた画像をiPadで何度もチェックしながら、ジャンプの調整を繰り返す。
「こら。そんなに焦るな」
ジャンプしては転倒を繰り返すヴィヴィの傍に、サブコーチが寄ってきて呆れたように言う。
「焦りますよ……いくらオフシーズンだからって……」
ヴィヴィは両膝に手を付き、俯いたままそう言う。
「お前達はオフでも全然スケートから離れないけれど、他のトップスケーターはこの時期は皆旅行へ行ったりして、リフレッシュする時期だろう……。俺からしたら、お前らにはもっと休んで欲しいくらいだ」
「………………」
確かにサブコーチが言うとおり、旅行や休暇はこの時期でないと取るのが難しいだろう。しかし、
(私は、休んじゃ駄目だ……オリンピックの頂点に立ち、世界選手権も優勝した……そんな私に、ファンもスケート関係者も、周りは皆『強いヴィヴィ』を望み、期待してくれている……だから――)
ヴィヴィはぐっと膝に置いていた掌に力を込めると、顔を上げる。
「私は、休んじゃ駄目なんです……」
「え……?」
一瞬思いつめたような顔を覗かせたヴィヴィに、サブコーチが心配そうな表情になる。そんなサブコーチに気づき、にっと笑ってみせたヴィヴィは、同じリンクで滑っているクリスのほうを見て唇を尖らせる。
「だって、このままじゃ、どんどんクリスに置いてかれちゃう」