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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第46章
「朝比奈と、牧野マネージャーが一緒なのでしょ? どちらかに付き合って貰えばいいじゃない」
4年来ていて初めてそんなことを言われ、双子は(なんだろう?)と思いながらも、それぞれ口を開いた。
「それも、そうだね……。本当は、ヴィヴィも一緒に、行きたいけれど……」
と了承したクリスに対し、ヴィヴィは、小さな声で発した。
「私は……練習しなきゃ……」
「ヴィヴィ……?」
向かいのジャンナが、不思議そうにその名を呼ぶ。
「ちょっと、ここのところ、3回転アクセルの調子、戻らなくて……」
そう言って苦笑するヴィヴィに、ジャンナは「そう……。ま、気が向いたらちょっとは遊びなさいよ?」と気遣ってくれた。
その後、ヴィヴィの振り付けをすることになり、ジャンナとヴィヴィはミーティングルームに移動した。
ヴィヴィの向かいのソファーに座ったジャンナは、また体が大きくなったようで、若干窮屈そうだった。
「FPの曲は、こちらで選んでいいって話だったけど?」
「あ、はい」
唐突にそう切り出され、ヴィヴィはどもりながら相槌を打つ。
「ふっふっふっ~。これに決めました~!」
ジャンナはそう楽しそうな声を発すると、バッグの中から一枚のDVDを取り出した。
「Sleeping Beauty ―― 眠れる森の美女、ですか」
それはクラシック・バレエの不朽の名作、チャイコフスキー作曲のバレエ『眠れる森の美女』だった。
「そうっ! 大好きなの、これ~っ!」
まるで夢見る乙女のように瞳をキラキラさせたジャンナに、ヴィヴィは「へ、へえ~」とちょっと引いた。
「ほら! ヴィヴィ、子供の頃からバレエやってると聞いてたし、ジュリアンもバレエの曲やらせたがってるし、ちょうどいいと思うのよね~」
「あ、実は先シーズン終わってから、また真面目にバレエのレッスン、受け直してます」
「あら、じゃあ、ちょうどいいじゃない。私って『先見の明』ある~!!」
ジャンナの自画自賛のその言葉に、ヴィヴィの華奢な体がピクリと震えた。
ヴィヴィはジャンナからすっと視線を外す。
「本当に、そう、思います……」